お絵描き塗り絵などの際に今すぐ使いたい!子どもの絵を褒めるポイントとNGワード

お絵描き塗り絵などの際に今すぐ使いたい!子どもの絵を褒めるポイントとNGワード

子育てをしていると、お絵描きや塗り絵など、ご家庭のなかでお子さまがアートに触れる機会は多いですよね。周りの子と比べて子どもの絵が上手くないと感じることや、子どもが塗り絵を線からはみ出して塗ってしまうことに心配になったことがある保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、お子さまがお絵描きや塗り絵をする際に、保護者の方におすすめの声かけやNGワードを「芸術による教育の会」の 屋嘉部さんにうかがいしました。

<インタビューをさせていただいた方>

芸術による教育の会 取締役 ゼネラルマネージャー 屋嘉部正人さん。「芸術による教育の会」として、東京、神奈川、埼玉、千葉を中心に105の教室で絵画指導を運営。96人の美術家が講師として、これまで約3600人の子どもたちに生きる力を育むことを目的に絵画指導を実施した。また、幼稚園への派遣型の絵画指導や「どこでもアート」というオンラインのアートスクールも展開。

「絵の具をこぼしてしまった」というハプニングからはじめるお絵描き

インタビュアー(※以下、イと表記):屋嘉部さんはアートを通じて子どもたちにかかわる際に、どのようなことを意識しているのでしょうか。

屋嘉部(※以下、屋と表記):私たちは、子どもたちの想像力や好奇心を掻き立てるようなきっかけを作ることを意識しています。

たとえば、私たちの絵画教室は「絵の具をこぼしてしまった」というハプニングから作品作りをスタートさせたりします。

絵の具をこぼして付いたシミを見ながら、子どもたちに対して「せっかくの白い紙が汚れちゃったね!」と問題提起をすると、子どもたちは「ここにクレヨンで目を付けると、うさぎになるよ!」というように、想像力を広げながら絵を描きはじめます。ハプニングをポジティブに捉え新たな価値を創造するカリキュラムです。

また、子どもたちの画用紙にはそれぞれ違う絵の具のシミが付いているので、他の誰かの作品を真似したくても同じように描くことはできません。

このように、できるだけ子どもたちの遊び心を刺激しながら、想像力を広げていくことができるアートの機会を作ることを大切にしています。

きちんと色を塗らないでもあんしん!「ちゃんと育っている」サインを見逃さないで!

イ:ご家庭で、お子さまがお絵描きや塗り絵をする際は、保護者の方はどのようなことに気をつけるのがよいのでしょうか。

屋:意外に思われるかもしれませんが、きちんと色を塗らないお子さまの保護者の方には、「あなたのお子さまは、ちゃんと育っていますよ!」と伝えることが多いです。

実は色の塗り方で、子どもが「どこを大事にしているのか?」を見て取れるんです。

たとえば、人を描いたときに、顔や髪の毛は綺麗に塗るけれど、洋服になると雑に塗っている子どもがいたします。

こういう子どもは、「どこを大事にしていて、どこは手を抜いてもよいのか」を自分自身で考えることができていて、自分のなかで要領が掴めていると感じます。なので、塗り方にムラがあるのは、その子どもの素直な心が出ていてとてもよい傾向なんです。

大人の方でも、仕事であれば、要点を押さえてどのように緩急をつけるのかが大事になってきますよね。それと同じように、お子さまが塗り絵をしたときは、パーフェクトに塗らせるのではなくて、自由に塗らせてみて、塗り方からその子が大切にしているところを注目してみてください。

そういう視点で捉えると、お子さまの塗り絵がはみ出していたり、現実にはありえない配色で塗っていても全く問題ないんです。

お子さまが塗り絵をする際は、保護者の方には「お子さまが大切にしている部分を見つけた上で、お子さまの気持ちを汲み取りながら共感すること」を、心かげていただくとよいと思います。

「上手に描けたね」はNG!?それよりも大切なライブ感

屋:また、注意をしていただきたいのは、保護者の方がお子さまに対して、「上手に描けたね!」「色を綺麗に塗れたね!」などの声かけをする際です。

こういう声かけをされる際に、言葉の裏にある「他の色も綺麗に塗ってほしいな」などの、保護者として「こうしてほしい」という意図が見えるような声かけには、お子さまはやらされている感を感じてしまうことがあります。

だから、保護者の方が子どもと同じ目線まで降りてきて、同じように楽しむことを大切にしてほしいと思います。

同じように楽しむとは、たとえば「上手に描けたね!」という声かけだけではなく、保護者の方もお絵描きのライブ感を感じながら、「あっ、塗ってる!」「激しく塗ってる!」などと、ライブの実況中継をしているような感じでお子さまに声をかけていくイメージです。

「私はこう思うよ!」共感を伝える「I(アイ)メッセージ」

屋:また、お子さまが絵を描くことに特に集中しているときは、無理に声はかけずにそっとしておくことも大切です。そういうときに声をかけても、お子さまは聞いていないことが多いですしね。

お子さまが集中状態から覚めて、保護者の方に「絵を描いたから見て!」などといってきたときには、「どれどれ、見たい!見たい!」と声をかけて、対話をしていきましょう。

特に、お子さまが保護者の方に絵を見せてくるときは、お子さまには絵を褒めてもらいという気持ちもあるかとは思いますが、客観的な評価の言葉ではなく「私は絵を見てこう感じたよ!」という、いわゆる「I(アイ)」メッセージを伝えてあげるのがよいと思います。

子どもの創造性を育む褒め方

イ:そうなると、お絵描きや塗り絵において、褒めることは避けた方が良いのでしょうか。

屋:必ずしも褒めることが悪いことではありません。ですが、「上手にできること」を褒めすぎると、子どもが「上手という価値観が一番大事なんだ」と認識して、自分が上手にできないことにチャレンジできなくなってしまうことがあります。

そのため、上手にできたことを褒めるのではなく、努力や過程を褒める方が効果的です。

また、「上手だね!」という褒め言葉は、意外と表面だけを見てかけてしまうことがあります。お子さまの描いた絵に興味関心があれば、褒める言葉の前に「もっと知りたい」という気持ちからの問いかけが出てくると思います。

たとえば、お子さまがいつも描いているキャラクターの女の子の絵の髪の毛に、その日はアクセサリーの絵が描き加えられていたとします。

そうすると、「上手に描けたね」の声かけの前に、お子さまの絵に興味関心を持っていれば「髪につけているこれは何?」と質問が出てくるのではないでしょうか。

するとお子さまも「アクセサリーだよ!」と答えると思います。そこに対して、保護者の方が「なるほど、あなたの大好きなアクセサリーに似てるね!」などと対話をしていくと自然と話が広がりますよね。

お子さまにとっては、保護者の方が自分の絵に興味を持ってくれて、そこから対話が生まれることは、そこに褒め言葉がなくても十分に嬉しいことだと思います。

まとめ

屋嘉部さんは、「学校では美術の分野に通知表は付きますが、アートは一人ひとり違っていい、むしろ違った方がいいんだ」とおっしゃいます。

この記事をご覧になった方のなかには、周りの子と比べて子どもの絵が上手くないと感じることや、子どもが塗り絵を線からはみ出して塗ってしまうことに心配になったことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、アートは子どもの個性が出てくるものであり、本来それぞれの個性について良い悪いと評価できるものではありません。

一人ひとりの個性を認めてあげられるのがアートだと思いますし、お子さまの自己肯定感は、自分の個性を保護者の方や周りの人たちから認めてもらうことで高まっていくと思います。お子さまのご家庭でのアート体験の際には、今回の記事の内容を参考にしていただけますと幸いです。

<インタビューでご紹介した「芸術による教育の会」のオンラインアートスクール【どこでもアート】の情報はこちらよりご覧ください>

【どこでもアート】