いじめが起きる原因とは?保護者ができることやいじめ防止の取組み事例をご紹介
「いじめ」は日本の社会問題の1つでしょう。この記事ではなぜいじめが起こるのか、原因やいじめが起きやすい環境、保護者はどうすればいいのか対応方法などを紹介しています。いじめの対策方法や、保護者としての対応方法を知りたい場合は、ぜひこちらを読んでみてください。
「子どもがいじめられているかもしれない。どうしたらいいの?」
「なぜいじめが起こってしまうの?」
子どもが学校に通い出すと、保護者が悩む問題の1つが「いじめ」に関することではないでしょうか。
この記事では、いじめが起こる原因や継続してしまう原因、起きやすい環境の例を紹介しています。記事を読むことで、なぜいじめが起こってしまうのか、続いてしまうのかわかるでしょう。
子どもがいじめられた時に、保護者ができることについても紹介しています。もし、いじめがあったら保護者としてどうすればいいのか、子どもへの対応方法も把握できるため、適切に行動できるようになるでしょう。
また、いじめにあった際の相談先も紹介しているため、いざという時に役立ちます。
子どもがいじめにあうか心配な方、いじめにあった子どもや周囲へどう対応すべきか知りたい方は、ぜひ、こちらの記事をチェックしてみてください。
【文部科学省公表】いじめが起きる原因は大きく3つ
そもそも「いじめ」とは、学校に通う生徒が同じ学校に通うほかの生徒に対して、物理的あるいは精神的な影響により、心身の苦痛を与えることと定義されています。これは「いじめ防止対策推進法」による定義です。
このため、いじめが起こるのは、いじめた子どもに原因があると考える人もいるでしょう。しかし、それ以外にも原因があると考えられています。
生徒の問題
いじめられてしまう側は、対人関係を得意としていないことや、ほかの生徒に対する思いやりが欠如していることより、いじめが起こると考えられています。
一方で、いじめる側の子どもが、満足感や成し遂げたという達成感を得ることが少なく、いじめによってそれを得ている可能性もあるでしょう。
また、不満やストレスを感じた時に耐性がなかった場合、ほかの子どもを不満やストレスのはけ口として、いじめてしまうこともあります。
家族の問題
核家族や一人っ子家庭の増加により、自分以外の家族との関わり合いが希薄になること、親の過保護や過干渉による子どものストレスや不満なども、いじめの原因と考えられています。
また親の価値観が多様化したことによる、思いやりや規範意識を重視しない姿勢や、協調性のなさなども子どもに影響するでしょう。
そのため、いじめの原因が子どもにあった場合、いじめという行為に至ってしまう原因が、子どもの家族にもあると考えられています。
学校の問題
いじめに対する教師の認識や、生徒とのコミュニケーション不足といった、教師側の問題もいじめの原因と考えられています。
また、価値観が一つに限られるような環境では、その価値観が劣っている生徒を差別するといういじめが起きやすくなってしまうでしょう。
いじめた子どもに原因があるだけでなく、教師や学校のあり方によっても、いじめを助長してしまうような環境になってしまうことがあります。
いじめが継続してしまう原因
一度いじめが起こると、長く同じ子どもばかりがいじめられてしまうことがあります。いじめが継続する原因は、周囲の子どもが自分へのいじめを恐れてかかわろうとしない、自分には関係ないといった態度で傍観してしまうことです。
生徒が止めなくても、本来は教師がいじめをやめさせなければなりません。しかし、教師自身がいじめられた子どもやいじめた子と関係を築いており、それを崩すのを恐れて指導できないことがあります。
今のクラスの雰囲気を壊したくないと、強く非難しないこともあるでしょう。
子どものいじめが起きやすい環境例
いじめが起きることには、生徒・家族・学校それぞれに原因があります。これらの原因が重なりあえば、一般的な環境よりもはるかにいじめが起きやすい環境になるでしょう。
いじめが起きやすい環境とはどういう環境なのか、紹介します。いじめが不安な場合は、これらの環境に心あたりがないか考えてみましょう。もしすでにいじめの問題がある場合は、こういった環境を変えることを検討するのがおすすめです。
大人が子どもを見ていない
先生が多忙で生徒とコミュニケーションがとれない状況や、先生の目が行き届かない時間帯や場所で、いじめが起きやすくなっています。
先生がいる目の前で、いじめをしようとする子どもはあまりいないでしょう。しかし周囲の生徒が恐れや無関心から傍観している状況であれば、先生がいなくなった休み時間の教室や、先生が普段いない廊下や階段などでいじめが起きやすくなります。
多様性や違いを認めにくい
生徒が同一になることを求めるような環境、はみ出る生徒を認めないような環境でも、いじめは起こりやすくなります。
これは同じようにできない子どもを排除したいと、子どもたちが考えてしまうことが理由でしょう。この場合はいじめられる側にも原因があると、いじめる側が考えてしまい自己を正当化してしまうため、いじめを辞めさせることが難しいでしょう。
また生活指導が厳しく、一人が失敗するとクラス全体に連帯責任を問うような環境では、失敗しがちな子どもに対するいじめが発生しやすくなります。
上下のラベリングが作られやすい環境である
生徒にわかりやすいラベリングが作れる環境は、生徒同士が簡単に上下関係を作ってしまうため、いじめが起きやすくなるでしょう。
たとえば、進学校やスポーツの強豪校のように、価値観がテストのできやスポーツの結果などわかりやすく限定的なものであった場合、できる子どもとできない子どものラベリングがしやすくなります。
その結果、できる子どもができない子どもをいじることがあるでしょう。いじりはやがて、いじめへとエスカレートする可能性があります。
いじめをしてもよいと子どもが認識している
いじめをしてはいけないことは、子どもも理解しています。しかし親や先生がいじめを目撃しても見て見ぬふりをしたり、いじめている子どもを叱ったりしないでいると、いじめをしてもよいと勘違いして、いじめやすい環境になってしまうでしょう。
大人が「いじめられる側にも問題がある」、といったような発言をした場合も同様です。このような対応は、いじめられる側が悪いと子どもが認識してしまいます。
また、厳しい生活指導や体罰が行われているような環境でも、子どもが同じようにしてよいと考えるため、いじめは起こりやすくなります。
ストレスが多い
いじめの原因には、ほかの子どもをストレスのはけ口にするという理由があるため、子どもにとって不満やストレスが多い環境は、いじめが起きやすいでしょう。
なかでも、いじめに向きやすいストレスは、友人関係、勉強やスポーツでの競争、嫌なことがあった時の不満や怒りなどです。
ストレスが多いと、それだけで子どもは攻撃的になりやすいでしょう。さらにいじめをしてもよいと勘違いするような環境があれば、いじめへのハードルは低くなります。
子どもがいじめられた時に保護者ができる4つのこと
もし、子どもがいじめられたとき、保護者は子どもを守るため、周囲に働きかけることが大切です。いじめはエスカレートしやすいため、気づいた時点で早めに動くようにしましょう。
加害者にいじめをやめさせ、いじめ問題を解決させるためにはどうすればいいのか、誰に相談できるのか紹介するため、参考にしてみてください。
先生に相談をする
子どもがいじめられていると頼ってきた、あるいは保護者が自ら気づいた場合は、まずは先生に相談し、対応してもらいましょう。相談する相手の先生は担任ではなく、前の担任の先生やほかの先生でも構いません。
特に、子どもが「先生にいわないでほしい」と伝えてきた場合は、担任の先生との信頼関係が築かれていない可能性が高いでしょう。そのため、担任以外の話しやすい先生への相談を検討してみてください。
先生には、いじめを解決するために協力してもらわなければなりません。きちんとアポイントをとって、話す時は冷静に話すように心がけましょう。
加害者の子どもとその保護者と直接話をする
いじめ加害者の子どもは、いじめをしていることを保護者に知られたくないと考えている場合が多いため、保護者を呼んで直接話すようにしましょう。
学校側の対応でいじめが改善しなかった場合、学校に依頼して相手の保護者に連絡をとってもらいましょう。加害者の保護者と直接話をして、これからは、決していじめないことを約束してもらいます。
いじめは「犯罪」です。もし改善しないようなら、警察に連絡することも伝えておくといいでしょう。
関係者全員で話し合う
いじめがなかなか解決しなかった場合、いじめ加害者やその保護者、学校の先生に教頭、校長先生などの関係者を巻き込んで話し合いましょう。
先生の対応がよくなくても、教頭や校長先生など先生よりも力関係が上の人に話すことで、具体的ないじめへの対策を求められます。いじめ加害者の保護者も含めて、いつまでに改善しなければどうするのかといったことを決め、対策するよう求めましょう。
可能であれば、話し合い当時までに、いじめの具体的な内容や証拠を添えておくのがおすすめです。
弁護士に相談をする
保護者自身で動くことに不安がある場合は、弁護士に相談して対応してもらいましょう。弁護士はトラブル対処の専門家であるため、法律家として、いじめ問題を解決に導いてくれるでしょう。
どの弁護士に依頼するのか、弁護士選びも重要です。いじめ問題に対応したことのある弁護士や、弁護士事務所を選ぶとあんしんでしょう。いじめ加害者や学校に対して、暴行罪や傷害罪などの処罰や、損害賠償請求や示談交渉などの対応を依頼できます。
出典:学校問題専門チームの弁護士へお任せください!|ベリーベスト法律事務所
いじめにあった子どもに対して保護者ができること
子どもがいじめられていると気づいたとき、いじめの解決に動くだけでなく、子ども自身に保護者がしっかり対応することも大切です。子どもに対して、まずどのような対応をすればいいのか、しておきたいことや、してはいけないことなどを紹介します。
子どもがいじめにあってはいないけれど心配だという場合も、もしもに備えて、事前に把握しておきましょう。
最後まで子どもの味方でいる
子どもに相談された、あるいはいじめに自ら気づいたら、子どもに味方であることを伝え、いじめが解決するまで子どもの味方として行動しましょう。
子どもの相談を真剣に聞かなかったり、大したことはないといったりしてしまうと、子どもにとって頼れる存在がいなくなってしまいます。保護者が味方であること、絶対に守ると伝えることで、子どもにあんしんしてもらいましょう。
子どもが安らげる場所を用意する
いじめられている子どもにとって、学校はあんしんできる場所ではありません。子どもがいつでも安らげるように、あんしんできる場所を用意しましょう。
安らげる場所の対象となるのはまず自宅、そして家族や親せきの家、友だちの家や図書館、公民館などです。子どもにとって行きやすいところに、あんしんできる場所を用意しましょう。
親が先走った行動をしない
子どもの気持ちを一番に考えて、親の意志で先走った行動をしないように気をつけましょう。子どもがいじめられていると知ると、すぐに行動したくなるでしょう。しかし親が先走っていじめ加害者の保護者や先生と話しあいをすることを、子どもが望んでいない場合があります。
子どもには、子どもなりの考えがあります。子ども自身にとって最もよい形でいじめを解決するために、子どもの気持ちや希望を優先して動くようにしましょう。
子どもにいじめ相談窓口で相談させる
・24時間子どもSOSダイヤル(24時間年中無休)
・子どもの人権110番(平日8:30~17:15)
・いのちの電話(毎日10:00~22:00/16:00~21:00)
・チャイルドライン(年末年始を除く毎日16:00~21:00)
・よりそいホットライン(24時間)
いじめを相談できる窓口はいくつもあるため、紹介します。家族にいじめについて詳しく話しにくい場合や、家族だけで問題を抱えていると苦しくなることがあるため、第三者機関の相談窓口でも相談可能なことを子どもに教えましょう。
いじめを防ぐための取組み事例
いじめやいじめが継続する原因となる周囲の傍観や、いじめを大人が容認していると子どもに勘違いさせないための対策や取組みが行われています。
「いじめは許されないこと」を教え、正しいことは傍観ではなく、大人に伝えるという行動であると指導しています。その際、先生は生徒を守るという態度を明確にする必要性が求められています。
また、道徳教育として行っているのが、思いやりや相手を尊重すること、人権の大切さなどの指導です。
ほかにも、いじめに早く対応するために、リーダーである校長のもと、先生ごとに役割分担をして責任の所在を明らかにし、情報をすぐに共有できる体制作りなども行っています。
保護者がいじめの相談ができるところ
子どもがいじめにあい、どうしていけばいいのか困った時に、いじめについて保護者が相談できるところがあるため紹介します。いじめの対応について悩んだ時や、不安になった時は、ぜひ下記に紹介する場所へ相談することを検討しましょう。
教育センター
文部科学省が設置した「教育センター」では、いじめや不登校といった、子どもの教育に関する悩みを相談できます。子どもだけでなく、保護者や教育関係者への支援を目的としているため、保護者の方も問題なく利用可能です。
教育センターは各都道府県にあるため、お住まいの地域の教育センターに連絡してみましょう。
出典:都道府県・政令指定都市・中核市教育センター等|文部科学省
スクールカウンセラー
「スクールカウンセラー」は、「心の専門家」として学校に配置・派遣されています。子ども自身がいじめについて相談するだけでなく、保護者の相談も受付けているため、ぜひ利用してみてください。
先生に直接相談しにくい場合には、スクールカウンセラーに相談するといいでしょう。スクールカウンセラーは、ほかの先生との調整役を担ってくれます。スクールカウンセラーに相談することで、解決するために調整してくれるでしょう。
こどもの人権110番
「こどもの人権110番」は、法務省の所管です。こどもの人権110番ではいじめや、部活動などでの暴言・暴力などの相談を受付けているため、周囲に相談しにくい方は、ぜひ相談してみましょう。
被害を受けている子ども自身の相談やその保護者の相談だけでなく、「周囲にいじめられている子どもがいる」相談も可能です。
出典:いじめなどの電話相談窓口【こどもの人権110番】|法務省
いじめの原因を理解し防止に活かそう
いじめは加害者となる子どものストレスや、いじめを助長するような周囲の環境などによって起こりやすくなっています。
いじめを防ぐには、生徒に与えるストレスを和らげたり多様性を認めたりすること、周囲がいじめは許されないという共通認識をする環境作りが大切でしょう。
もし、子どもがいじめにあったら、まずは子どもをあんしんさせることを心がけましょう。保護者が先走らず、子どもの希望に寄り添い、先生や加害者の保護者、弁護士などに相談しながら解決することがよいでしょう。