【文部科学省調査より】いじめとは?いじめの判断基準や原因、対応方法について解説
いじめとは、具体的にどのようなものなのか、知りたい人はいませんか。この記事では、文部科学省のいじめの定義や判断基準、いじめが起きる原因や対応方法を解説しています。自分の子どもがいじめられないか心配だという人は、ぜひ、この記事を参考にしてみてください。
「いじめの定義って何?」
「いじめの判断基準を知りたい」
「いじめを受けてしまう原因や対応方法にはどんなものがあるの?」
このように、子どものいじめについて、疑問や不安を感じている保護者の方もいるのではないでしょうか。
本記事では、文部科学省の調査によるいじめの定義や分類などの基礎的な知識をはじめ、いじめの判断基準や年齢別のいじめの原因、対応方法などを解説しています。この記事を読むことで、いじめに関する具体的な知識を身に付けることが可能です。
その知識をもとに、自分の子どもが、いじめの被害に遭った時の早期発見や早期対応に活用することができるでしょう。また、子どもがいじめに遭わないよう防止するための対策にも活用できます。
子どものいじめについて知りたいという保護者の方は、ぜひ、この記事をチェックしてみてください。
いじめとは
根強い社会問題として挙げられるいじめの定義は、徐々に変遷しています。
文部科学省の「いじめの定義の変遷」によると、昭和61年、平成6年、平成18年と定義が変化しており、現在では平成25年に施行された「いじめ防止対策推進法」の定義に統一されています。
ここでは、いじめの定義で主なポイントとなる部分を確認しておきましょう。
・いじめとは、児童生徒に対して行われる心理的または物理的な影響を与える行為
・当該児童生徒と一定の人的関係のある、ほかの児童生徒が行っているもの
・インターネットを通じて行われたものも含まれるため、いじめが起こった場所は学校の内外を問わない
この内容は、いじめ防止対策推進法に準じており、「心理的・物理的な影響」や「心身の苦痛」を伴う行為がいじめと定義されています。
出典:いじめ防止対策推進法(平成25年9月28日)|文部科学省
「いじめ」は6つに分類される
「いじめ」と一言でいっても、その内容はさまざまで、時代とともにその形は変化しています。そのため、実際に学校ではどのようないじめが行われているのか、その種類を知っておくことが重要です。
ここからは、いじめの種類・分類を態様別に6種類解説します。子どものいじめに、いち早く気づくための参考になるでしょう。
言葉によるいじめ
言葉によるいじめとは、冷やかしやからかい、悪口、脅し文句のほか、嫌なことをいわれるいじめをさします。これらのいじめは、直接本人にいうだけではなく、本人の周りからわざと聞こえるようにいってくる場合もあります。
いじめの種類のなかでも行われる頻度が多く、年齢に関係なく、いじめの手段として用いられているところが特徴です。
態度によるいじめ
態度によるいじめとは、仲間はずれや集団による無視などの行為をさします。まるで、そこにいじめられている児童生徒が存在しないかのように振舞うもので、当該生徒が、直接危害を加えられていないことから、いじめだと気づかれにくいところが特徴です。
また、態度によるいじめは集団で行われることがほとんどで、いじめられていない児童生徒も、自分がいじめられないように参加しているケースがあります。
暴力によるいじめ
暴力によるいじめとは、叩く・ぶつかる・蹴られるなど、直接危害を加える行為です。遊ぶふりをして行われるものもあれば、ものを使って暴力を振るうなど、強い痛みや怪我を負わせるケースも多く見られます。
周囲から見ると、遊びの延長やからかっているだけのように見えることもある点に、注意が必要です。
いじめが発覚しないように、力加減に気をつけて、傷が残らないようにする場合もあり、悪質性が高いいじめに発展する可能性があります。
精神的ないじめ
精神的ないじめとは、嫌なことや恥ずかしいこと・危険なことをされるものや、パソコンや携帯電話などでの誹謗・中傷のことをさします。
肉体的に直接危害を加えて傷つけるのではなく、精神的に危害を加えるところが特徴です。そのなかでも、インターネット上の掲示板やSNSを用いたいじめは加害者を特定しにくく、特定できても再犯しやすいところが問題になっています。
持ちものに関するいじめ
持ちものに関するいじめとは、金品や持ちものを隠される・盗まれる・壊される・捨てられるなどの行為をさします。このことから、物質的ないじめとして、考えることができます。
隠されたうえに壊されるなど複合的に行われることもあり、買い直さなければいけないなど経済的ないじめにもつながっているところが特徴です。
金品に関するいじめ
金品に関するいじめとは、金品をたかられる行為をさします。いわゆる「カツアゲ」や「たかり」と呼ばれる行為で、いじめの種類のなかでは行われる頻度が少ないでしょう。
ただし、悪質なものになると万引きなどを強要する、親の金を盗ませるなど、別のいじめに発展してしまう場合もあります。
「いじめ」の判断基準
子どもが受けている行為がいじめかどうか判断するために、平成25年に施行されたいじめ防止対策推進法によって、判断基準が設けられました。
判断基準は非常にシンプルで、「身体的・精神的にかかわらず、いじめられた本人が苦痛を伴うかどうか」が基準になっています。
簡単にいえば、周囲が遊びやおふざけで行った行為に対して、本人が「つらい」「やめてほしい」と思えば、いじめと判断できるということです。
いじめがあった場合、いじめられた児童生徒の立場に立って判断することは、いじめ防止対策推進法で定義されています。
その上で、いじめだと判断する際には、以下のポイントに当てはまるかどうかを確認する必要があるでしょう。
・相手が嫌がる行為を複数回行っている(反復性)
・常に特定の集団内で行われている(同一集団内)
・行為者が優位に立っていて、行為を受けている方が貶められている(立場の不対等)
・嫌がっていることを理解しているのにわざと行う(故意性)
・1対1ではなく周囲に傍観者がいる(傍観者の有無)
出典:いじめ防止対策推進法(平成25年9月28日)|文部科学省
いじめが起こる原因
ここまで、いじめの定義や種類について解説してきましたが、なぜいじめは起きてしまうのでしょうか。
そもそも、いじめは「いじめの加害者」と「いじめの被害者」だけで完結しているわけではなく、いじめに加担せずに楽しむ「観衆」や見て見ぬふりをする「傍観者」など、複数の構造で成り立っています。
このようないじめの構造を踏まえて原因を考えなければ、いじめの本当の原因を把握することは難しいでしょう。
ここでは、「なぜ、いじめが起こるのか」について、その原因を見ていきましょう。
環境的な原因
子どもの生活環境の良し悪しが、いじめが起きる原因になることがあります。ストレスが溜まりやすい環境にいる子どもは、いじめにかかわりやすいでしょう。
子どもは、ストレスや不満が溜まると他者に対して攻撃的になりやすく、はけ口として誰かを攻撃してしまうことがあります。
そのような生徒を放置してしまうと、さらにストレスが溜まり、状況が悪化してしまいかねません。結果、よりいじめがひどくなる危険性が出てきます。
加害者が増える原因
いじめが起きる原因として、多くの「観衆」や「傍観者」が加害者に同調することが挙げられます。
実際は、いじめの構造のなかに含まれる「観衆」や「傍観者」は、被害者に直接危害を加えていません。
しかし、いじめがあることを知りながら、何も行動を起こさないという点で、いじめを助長している加害者に含まれます。
加害者が増える原因には、加害者に同調してストレスを発散していたり、自分が被害者にならないように強迫観念に駆られていたりすることが挙げられるでしょう。
【年齢別】最も多いいじめの種類は?
学校で行われているいじめのなかで、どの年齢でも多いとされているのが言葉によるいじめです。いじめのなかでも気軽に実行しやすく、はじめやすいのが理由でしょう。
しかしながら、いじめの内容は年齢によって、変化していく傾向があります。低学年では、軽いいじりだったものでも学年が上がるにつれて、本格的ないじめに変わる可能性もあるため、注意が必要です。
ここからは、最も多いいじめの種類を小学校・中学校・高校の3つの年齢別に解説します。年齢によって、どのようないじめが増えてくるのか、しっかりと把握しておきましょう。
小学生に多いいじめ
小学生のいじめで最も多いのは、言葉によるいじめ(57.9%)です。次いで多いとされているのが、暴力によるいじめ(24.0%)となっています。
言葉や暴力によるいじめは、特に低学年で見られやすい傾向があります。言語表現が未熟で自分の感情をうまく表現できず、そのストレスや不満を解消する方法がわからないことが大きな理由でしょう。
中学生に多いいじめ
中学校のいじめで多いのも、言葉によるいじめ(63.2%)です。次いで暴力によるいじめ(13.8%)となっており、小学校と同じような傾向が見受けられます。
ただし、暴力によるいじめは、からかい半分やいたずら程度だった小学校のいじめよりもエスカレートしやすい傾向があるため、注意が必要です。
中学校の場合は、個人ではなく集団で行われるケースが増えてきます。最悪の場合は、ケガや治療が必要なレベルになる可能性もあるでしょう。
高校生に多いいじめ
高校生の場合も、最も多いいじめの種類として言葉の暴力(61.0%)が挙げられます。次いで多いのが精神的ないじめ(19.8%)となっているところが、小中学校との違いです。
特にインターネットやSNSを使った誹謗中傷や嫌がらせが多く、女子の間で行われるケースが多く見受けられます。現在、高校生のほとんどがスマートフォンを持っており、校内で使用できる環境があることも原因の1つでしょう。
これらのいじめは学校側も気づきにくく、陰湿なものになりやすい傾向があるため、注意が必要です。
いじめに対する文部科学省の対応
いじめは深刻な社会問題です。そのため、文部科学省では「いじめ防止対策協議会」を設置し、いじめ防止対策推進法に基づいた取組み状況の把握や検証、そして実効的な対策の検討を行っています。
そして、全学校と教職員に対して、いじめ問題を自分たちの問題として受けとめ、徹底して取組むように指示しています。
ここからは、文部科学省が学校や教職員に対して指示している、いじめに対する取組みを3つ解説します。
出典:いじめ防止対策協議会の設置について(平成27年度)|文部科学省
実効性ある指導体制の確立や適切な教育指導を行う
いじめが発生した際は、学校側が迅速に対応して悪化を防ぐことが重要です。さらに、表面上の解決ではなく、根本的に解決していくことが求められます。そのために行われているのが、実効性のある指導体制の確立や適切な教育指導です。
具体的には、以下のとおりです。
・各学校および教育委員会の密な相互連絡・報告の実施
・いじめに関するきめ細やかな状況把握と適切な対応
・校長のリーダーシップの下で、教職員の役割分担や責任の明確化を図る
・全教職員が密接な情報交換を行う
・いじめに対する共通認識を持って、連携した指導を実施する
上記のほか、事例研究やカウンセリング演習といった実践的な内容を持った校内研修にも取組んでいます。
いじめの早期発見・早期対応をめざす
いじめを早期発見するためには、子どもたちの様子に目を行き届かせることが不可欠です。そのため、文部科学省では、児童生徒の悩みを教師が受け止められる環境づくりと、児童生徒との信頼関係の構築の必要性を説いています。
そして、いじめの早期対応の取組みとしては、以下の点を挙げています。
・スクールカウンセラーや養護教諭といった学校内での専門家との連携
・児童生徒や保護者からの訴え、いじめの兆候のサインなどは些細なものであっても教員間で情報交換を行う
・いじめの事実確認、事実の究明を正確に行うために、被害者本人だけではなく友だちなどからも情報を収集する
上記のほかにも、いじめの事実確認を行ったあと、速やかに教育委員会へ報告し、必要な機関との連携を行うことが重要視されています。
いじめを受けた児童生徒へのケアと弾力的な対応
いじめを受けた児童生徒の心は大きく傷ついているため、これから先の生活や将来に支障をきたさないよう、心のケアをしていく必要があります。それと同時に、いじめを継続させないように被害者を守ることが重要です。
心のケアとしては、スクールカウンセラーの活用や養護教諭との連携が挙げられています。また、学校側のケアとしては、以下のような柔軟な対応も可能です。
・緊急避難としての欠席の容認
・グループ替えや席替え、学級替え
・被害者や保護者からの要望があれば、学校の指定の変更や区域外就学を認める措置
子どもがいじめられた際に親ができること
自分の子どもがいじめられているとわかった場合、そのまま放置するのではなく、子どものために行動する必要があります。しかし、実際にどのような対応をすればいいのか、子どものために何ができるのかわからないという人も多いでしょう。
ここからは、子どもがいじめられた際に保護者としてできることを3つ解説します。
味方だと伝える
子どもが認識している社会や人間関係は大人よりも狭く、家庭と学校が占める割合がほとんどでしょう。そのようななかで、学校でいじめられてしまった子どもは、深く傷ついて絶望している可能性があります。
そのため、保護者(家庭)が味方であると伝え、子どもがリラックスできる居場所や相手を作ってあげることが重要になります。
学校へ相談する
学校内で起きているいじめを解決するためには、解決の中心となる学校に対して、いじめの相談をする必要があります。
ここで注意したいのが、感情的に学校に抗議する対応をしないことです。感情的にならず、冷静に相談・話し合いをすることで、学校側もいじめ問題の解決に協力してくれるでしょう。
また、相談・話し合いをする際、いじめについての具体的な証拠や記録を持参することも大切です。子どもから話を聞いて、内容を文書化しておけば、「いった、いわない」の水かけ論や学校側のいじめの隠蔽を防ぎやすくなります。
学校以外の居場所を探す
いじめが原因で学校に行けなくなり、そのまま不登校になる子どももいます。このような場合は学校に戻ることに固執するのではなく、学校以外に子どもが勉強できる居場所を探すことも大切です。
代表的なものとしてはフリースクールや学習塾が挙げられますが、自宅でも家庭教師や通信教育を利用する方法があります。
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いじめに対しての知識を深め防止や早期発見に努めよう
いじめは時代とともに定義が変わっており、よりいじめられた子どもを守れるように変化してきています。
特に、いじめられた本人の目線でいじめと判断できる基準になったことで、本人の気持ちを尊重できるようになったところは大きいでしょう。それでも、いじめそのものがなくなったわけではありません。
いじめ予防や早期発見につながるよう、今回の記事を参考にして、いじめに対する知識を深めましょう。