メタ認知とは?育てるための方法例や親の接し方についてわかりやすく解説
メタ認知を子育てに活用できることをご存じでしょうか。本記事では、メタ認知の概要から子どものメタ認知を育てるメリット、子どもへの接し方を紹介します。子どものメタ認知を育てたいと考えている保護者の方は、ぜひ、チェックしてみてください。
「メタ認知とはどんな能力なの?」
「メタ認知を伸ばすとどんなメリットがあるの?」
「子どものメタ認知を育てたいけどどうすればよいの?」
このように子どものメタ認知を伸ばすことに興味を持っている保護者の方も、多いのではないでしょうか。
本記事では、「メタ認知とは?」からはじまり、メタ認知を伸ばすメリット、メタ認知が高い子どもの特徴、家庭で子どものメタ認知を伸ばす方法などをご紹介しています。メタ認知の内容を理解することができ、子どもと一緒にメタ認知能力を伸ばせるようになるでしょう。
記事を読むことで、子どものメタ認知を向上させる方法を知ることができます。
メタ認知能力について知りたい、子育てに活かしたいと考えている方は、ぜひ、最後まで記事をチェックしてみてください。
メタ認知とは
メタ認知とは、自己認識や自己管理能力をさします。自分が考えている・感じていることを客観的に把握する能力で、メタ認知を向上させることができれば、自分を客観的に判断できるようになるでしょう。
文部科学省の学習指導要領にも、メタ認知とは自分の感情や行動を統制することができ、客観的に物事を把握することができる力と記載されています。
メタ認知は認知心理学の1分野
心理学とは、人間の心の働きを科学的に研究する学問です。心理学の中には、「人間がどのように情報を獲得し、それを処理し、行動に結びつけるのか」を研究する学問として、認知心理学というものがあります。メタ認知能力は、この認知心理学の重要な概念の一つとされています。
「メタ認知」の具体例
公益社団法人日本心理学会の研究によれば、「メタ認知」の具体例は幅広い場面で見られます。
たとえば、数学の問題に取組む際、学習する人は自分の理解度を正確に評価します。そして必要に応じて補完的な学習材料を活用することで、より理解を深めることができるでしょう。
これは、メタ認知によって自分のことを客観的に見れるため、できているといえます。
また、メタ認知は感情のコントロールにも役立ちます。特に子どもは感情的になりがちで、自分の気持ちをコントロールするのが苦手です。メタ認知を活用できれば、出来事をポジティブに捉えることが習慣化され、心地よい心理状態を保つことができます。
メタ認知を構成するのは意見・経験・感情・価値観
メタ認知とは4つの要素で構成されています。各要素を理解することで、自身の価値観を深堀りできたり、客観視できたりします。意見・経験・感情・価値観の4つを追求することで、メタ認知能力を高めていくことができるでしょう。
要素の「意見」は自分自身の意見をさします。たとえば、「私は猫が苦手だ」などです。
要素の「経験」はその感情が生まれた背景になる経験をさします。たとえば、「小さいときに猫に引っ掻かれた経験があるから、私は猫が苦手だ」などです。
要素の「感情」はそのときの気持ちをさします。たとえば、「猫に引っ搔かれて、とても痛い思いをした」などです。
要素の「価値観」は意見・経験・感情から生まれる、他人とは異なる、自分の価値観をさします。
たとえば、「私の価値観として猫が嫌いだ。理由は小さいときに引っ搔かれて、とても痛い思いをしたからだ。しかし、引っ掻かれた経験がない人からすれば、猫は愛くるしい存在かもしれない」などです。
このように「猫が嫌いな理由」を客観視できないと、猫が好きな人と自分を比較し、恥ずかしくなったり、ネガティブになってしまう場合があります。きちんと猫が嫌いな理由を他人に説明できるようになることで、よりネガティブな感情に陥らずに済むでしょう。
メタ認知能力が高い人・低い人の特徴
メタ認知能力が高い人は、学習面においても、自分の理解度を客観的に評価して、苦手な部分を重点的に学習したり、より効率的な学習方法を見つけたりすることができます。
一方、メタ認知能力が低い人は、わからない問題にぶつかるとすぐに諦めてしまったり、学習方法を工夫せずに、同じ勉強法を何度も繰り返してしまうことで、学力の伸びが停滞することがあります。
また、メタ認知能力が高い人は、学習以外の場面でも自分の思考過程を振り返り、より良い方法を見つけ出すことが得意です。例えば、部活動や学校行事などで問題に直面した際、冷静に状況を分析して、さまざまな解決策を考え出すことができます。
一方でメタ認知能力が低い人は、問題に感情的に反応してしまい、適切な解決策を見つけることが難しい場合があります。
メタ認知能力は小学校高学年から伸びる
メタ認知は発達段階に応じて変化し、小学校高学年から飛躍的に伸びると知られています。メタ認知が発達してくると、今までは自分の好き勝手に話していた人が、相手が理解していないと気づいて、説明の仕方を変えるなどの行動がみられるでしょう。
勉強面では、自分の得意・不得意を客観的に判断し、どうすれば得意を伸ばせるのか、苦手を克服できるのかを理解できるようになります。自分に合っている勉強方法を確立できるので、よりよい学習習慣を身に付けることができるでしょう。
子どものメタ認知を育てる4つのメリット
ここまでは能力の概要についてご紹介してきましたが、メタ認知を育てることで具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。
メタ認知を育てることで、自分と他人の感情やニーズを理解しやすくなり、コミュニケーションスキルが向上します。他にも感情に振り回されることがなくなり、ストレスのない人間関係を構築できたりするでしょう。
ここではメタ認知を育てるメリットを4つご紹介します。
良好な人間関係を築ける
メタ認知が発達すると、自分や他人のニーズを正確に捉えられるので、円滑なコミュニケーションが可能です。相手の視点を考慮し、適切な対話ができるようになり、良好な人間関係を築く土台が整うでしょう。
子どもがメタ認知を伸ばすと自分の感情を理解でき、適切に対処することができます。これは対人関係において冷静で穏やかな態度を保つことが期待できるでしょう。
感情に振り回されない
メタ認知を伸ばすことで、感情のコントロールが可能になります。イライラしているときやネガティブになっているときでも、「なぜ今自分はイライラしているのか?」「ネガティブの原因は何か?」と客観的に考えることができるでしょう。
自分自身の感情を客観的に捉えることができれば、より冷静な判断を行うことができます。
課題解決能力が高まる
メタ認知によって冷静に物事を捉えることができ、問題や課題に対しても柔軟で効果的な解決策を見つけやすくなります。課題の本質を見抜く力を身に付けることができれば、どんな状況でも対応することができるでしょう。
自分で解決する経験を重ねることで、次の学びに活かすことができます。変化が激しい現代において、将来活躍できる人材になることができるでしょう。
自律性が高まる
メタ認知の発達により、自分の学習や行動に対する計画性が向上し、自立性が高まります。たとえば、「苦手を克服するために1日1時間は英語を勉強する」「遊びに行くために計画的に宿題をこなす」などルールを決めて主体的に取組むようになるでしょう。
目標を立てて、それを達成するサイクルを繰り返すことで、やり遂げるうれしさを実感し、ほかのことでも積極的になれます。自立性を高めることは、将来仕事をするときも役に立つ能力です。
メタ認知が高い子どもの特徴
では、実際にメタ認知能力が高い子どもにはどのような特徴があるのでしょうか。メタ認知が高い子どもは、目的意識を持って主体的に行動できたり、成功するための戦略を考えたりすることができます。
ここではメタ認知が高い子どもの特徴を4つご紹介します。子どものメタ認知能力を高められるよう、事前に理解しておきましょう。
目的を意識して行動できる
メタ認知が高い子どもは、目的を明確にし、それに向かって計画的に行動できる特徴があります。たとえば、自ら学習目標を設定し、それに基づいて計画的な学習行動を取るでしょう。
また「勉強しないと怒られて嫌な思いをするから」といった自分の感情のためにではなく、「テストでよい点数を取りたいから」「内申点を上げたいから」と、先を見据えた目標を立てることができます。
具体的な方法を考える
高いメタ認知を持つ子どもは、課題に対して具体的な解決方法を考え出す能力に優れています。抽象的な問題に対しても具体的なアプローチを見つけ出し、計画的に対処することができるでしょう。
たとえば、クラスで協力する必要があるプロジェクトで問題が発生した場合、先生に頼るのではなく、自分たちで話し合いの場を設け、クラスメイトと協力して問題を解決する判断をします。
また自身の過去の経験から推察し、問題に応じた対応を取ることも可能になるでしょう。
学力が高い傾向にある
高いメタ認知を持つ子どもは、学力が高い傾向にあります。これは自分の苦手科目や間違えた問題に対して、見直し・解き方の理解を徹底的に行うからです。
自己評価や学習攻略の工夫を通じて、学びの質を向上させることができています。学習意欲も高く、目標の学校や将来就きたい職業に向かって、継続的に学習することができるでしょう。
成功と失敗の要因を振り返る
メタ認知が高い子どもは、成功や失敗に対して客観的に振り返り、その要因を理解する能力があります。メタ認知が高い子どもは、何をやっても成功するというわけではありません。
結果が成功でも失敗でも、そうなった要因を分析し振り返る力があるからこそ、高い成績をおさめることができています。具体的な取組みとしては、成功したときは、そのやり方を次回にも活用し、失敗したときは、課題を洗い出し計画を改善していくなどです。
メタ認知を発揮できればたとえ失敗しても、「次こそは成功させる!」とポジティブな気持ちで、新たな一歩を踏み出すことができます。
家庭でできる子どものメタ認知を育てる3つの方法
メタ認知自体、高い能力のため「家庭で育てることができるの?」と疑問に思う方も多いでしょう。メタ認知能力の高い子どもの特徴を理解したところで、実際に子どものメタ認知を育てる方法をご紹介します。
メタ認知能力は絵本の読み聞かせや、日記を書くことでも養われます。親子で一緒にメタ認知能力を伸ばしていきましょう。
絵本の読み聞かせをする
絵本の読み聞かせは、子どもの感情や認知能力を発展させるためにも重要な手段です。絵本を通じてキャラクターの感情や心情を理解し、それに共感することで子どもの感受性やメタ認知が向上するとされています。
たとえば、絵本の登場人物が直面する問題に対して子どもがどのように感じ、どのように考えるかを一緒に話し合うことで、子どもは自分の感情や思考を意識的に捉えることができます。
1日の出来事を振り返る
子どもに日常の出来事を振り返る習慣を付けさせるのも、メタ認知の向上に役立ちます。親子で対話する時間を作り、子どもがその日の出来事を振り返り、感じたことや学んだことを共有できるように促してみましょう。
たとえば「今日学校で勉強したことを1つ教えて?」「今日の給食は何が美味しかった?」など質問してあげてください。この振り返りで子どもは自分の経験に意識的に向き合い、それを通して自己理解や他人との関係を築く力が育まれます。
交換日記をする
交換日記は、親子のコミュニケーションを深めつつ、子どものメタ認知を促進する手段の1つです。日記を通じて子どもに自分の思考や感情を文章に表現させ、親がそれに対してフィードバック(感想や意見など)を返してみてください。
子どもは自分の内面を客観的に見つめ、他人の視点を受け入れることができます。日記は記録として残るので、あとで見返したときによい思い出にもなるでしょう。
子どものメタ認知を育てるための親の接し方
子どものメタ認知能力を育てるために、親としてどのように子どもに接するべきなのでしょうか。メタ認知を育てるためには、子どもに気づきを与える声かけをしたり、親自身がメタ認知を体現したりすることが求められます。
ここでは子どものメタ認知を育てるために、親としてできる接し方を6つご紹介します。
客観的な考えを伝える
メタ認知とは自分の考え方や感じたことを客観的に判断・評価することです。自分で客観的に判断する前段階として、親が子どもに対して客観的な考え方を伝えてあげることで、子どものメタ認知を促すことができます。
子どもが特定の行動や課題に取組んだ際には、積極的にフィードバックをしてあげましょう。フィードバックをするときに「他人と比較している」感じを出さないよう注意が必要です。
具体的なフィードバックをする
具体的なフィードバックを提供することで、子どもが自身の行動や思考を理解しやすくなります。フィードバックを送る際、まずは子どもがメタ認知を働かせたことを褒めてあげましょう。
褒めたあとは「ここがよかったよ」と具体的に伝えてあげることがポイントです。模範例や改善点を具体的に指摘できれば、子どもはより自己認識を高めることができるでしょう。
メタ認知を働かせる声かけをする
子どもが悩んでいたり、立ち止まって思考が止まってしまっているときには、メタ認知を働かせるように促してみましょう。具体的には「なんでそのやり方にしたの?」「次はどうやってみようか」などと質問してみてください。
声かけにより子どもは自分の思考過程を振り返り、メタ認知を働かせることができます。
親自身がメタ認知をする
親自身が日頃からメタ認知を実践していると、子どもも真似をして思考を巡らすようになります。親が自己認識を高め、問題解決や学習戦略を意識的に選択することで、子どもはそれを見て学び、メタ認知能力を養うことができるでしょう。
メタ認知能力を鍛えるのは一苦労ですが、親子で一緒に楽しく学びながら向上させていくことをおすすめします。
協調性を高めるための声かけをする
協調性を向上させることもメタ認知の一環です。親が子どもに対して協力やチームワークの重要性を伝え、協力的な行動を促してみましょう。
たとえば、子どもと喧嘩をしたときは、「なんで喧嘩になったのか」「相手を傷つけることをいっていないか」を振り返りを行ってください。そしてなぜ自分がそのような行動を取ってしまったのかを考えてもらいましょう。
振り返る時間を設ける
メタ認知は自分が行ったことに対して、振り返りを行うことで向上します。子どもが何か活動を終えた際には、すぐに振り返る時間を設けるようにしましょう。
親が子どもに対して「今日の活動でどんなことがあったか」「どう感じたか」など尋ねることで、子どもは自分の経験を整理し、メタ認知能力を向上させることができます。
長期的視点を持って子どものメタ認知を育てよう
子どものメタ認知を育むためには、親自身もメタ認知を体現し長期的な視点で子育てを行うことが必要です。親が子どもに対して継続的に記事内で紹介したアプローチを実践することで、子どものメタ認知力は徐々に発展していくでしょう。
メタ認知を習慣化できれば、将来的な学びや成長につながることが期待できます。はじめのうちは上手くいかないことが続きますが、焦らず長期的視点で子どもに接していきましょう。