子どもたちが「大人になることや働くこと」に前向きになるためのヒントとは

子どもたちが「大人になることや働くこと」に前向きになるためのヒントとは

お子さまが、周囲の大人の働く様子を見て、働くことや大人になることにネガティブなイメージを持ってしまっていないか、心配になったことがある方は多いのではないでしょうか?そこで今回は、中学生・高校生のためのキャリアの部活「はたらく部」の代表を務める山本さんに、子どもたちに「大人になることや、働くことに前向きになってもらうためのヒント」をお伺いしてきました。

<インタビューをさせていただいた方>

はたらく部 代表 山本 将裕(やまもと まさひろ)さん。NTTドコモ 新事業開発部。     iU 情報経営イノベーション専門職大学 客員准教授。

<「はたらく部」とは?>

子どもたちが楽しく社会のことを学ぶことで、自らの人生の舵をとり、自信を持って未来を切りひらくことを支援するサービスです。中学生・高校生のためのキャリアの部活として、業界の第一線で活躍する現役社会人コーチが中高生の成長を親身にサポートしています。株式会社NTTドコモ docomo STARTUPの協力の元、株式会社アルファドライブが運営・提供しています。

子どもたちは保護者や先生以外の大人との関わりが少ない

インタビュアー(※以下、イと表記):働くことにネガティブなイメージを持っている子どもが多いといわれますが、山本さんはどのように感じていますでしょうか?

山本(※以下、山と表記):そうですね。中学生・高校生くらいになると、大人になることや、将来働くことにネガティブなイメージを持っている子どもは多いと感じます。

子どもたちがかかわる大人は、基本的には保護者や先生が大半です。仕事が多忙な保護者や先生は多いですし、ニュースではブラック企業のネガティブなニュースも目にすると思います。そういった環境に身を置いていると、どうしても大人になることや、働くことにネガティブな印象を受けてしまうのだと思います。

イ:私自身の過去を振り返っても、山本さんがおっしゃるように保護者や先生以外の大人と話す機会はほとんどなかったと思います。

山:私の知っているデータだと、親族と先生以外の大人に進路を相談する高校生は、全体の5%しかいないんです。

たとえばですが、周りに「地域活性化をするために、全力でこの街を盛り上げるんだ!」というような熱い大人がいたら、働くことにネガティブな印象は持たないかもしれません。ですが、実際はそういう熱い大人とあまりふれあえていない高校生が多いのです。

「越境活動」が子どもたちの未来をひらく

イ:大人になることや、働くことに前向きになってもらうためには、保護者の方はお子さまにどう接していけば良いのでしょうか?

山:子どもが将来のことを考える際に、彼らは「知らない世界は絶対に選べない」と思います。なので、保護者の方の役割は「親族や先生だけではなく、多くの大人とかかわる機会を作り、世界を知る機会を与えてあげること」だと考えています。

こういった活動は「越境活動」と呼ばれており、身近なところでは、アルバイトやボランティアなども「越境活動」に含まれます。キャリアの満足度や自己肯定感の醸成には、学生のうちから、学校と家の往復だけでなくいろんな大人とかかわることが大切です。

イ:越境活動は、キャリアの満足度にまで影響をおよぼすのでしょうか?

山:はい、影響があります。越境活動とキャリアの満足度の相関関係はデータでも示されていて、新卒社会人向けにアンケート調査を実施したところ、キャリア満足度が高い人は学生時代に越境活動をしていた人たちでした。

たとえば、就職活動では学生がキャリアプランを作ることがありますが、その際に「自分の好きなことや得意なことを書いて、キャリアプランを作ろう!」といわれても、自分の好きや得意が見つかっていない状態や、将来にどのような選択肢があるかもわからない状態では、キャリアプランを作るのは難しいですよね。

だからこそ、学校と家庭の往復だけの生活をやめて外に飛び出して、「今後、自分は何をして生きていくか」という問いや興味を持つことが大切です。キャリア教育の世界では、これを「キャリア探索活動」と呼んでいます。

キャリア探索活動は自ら問いを立て行動することが大切

イ:今の子どもたちのキャリア探索活動はどのような状況なのでしょうか?

山:小学校は習い事をやっているケースが多いので、ある意味キャリア探索活動がしっかりできている印象です。一方で、中学生以降は、部活動がはじまり、学校と家、または塾との往復しかしていないケースが増えています。

もちろん、学校の行事としてOBOGが講演に来る、社会科見学へ行くなどの機会はあるとは思います。ですが、学校が用意しているものをただ聞いているだけというスタンスで参加していては、自ら問いを立てて、興味を持つまでは至らないので、キャリア探索活動とはいえません。

社会科見学であれば、工場見学として機械を見るだけではなく、そこで働いている人が「どうしてこの仕事を選んだのか?」や「どういう人生を歩んできたのか?」などを深く知る機会を作ってこそ、キャリア探索活動としての意義があると考えています。

イ:キャリア探索活動は、人との関わりが欠かせないんですね。

山:その通りです。これがまさに越境活動に当たります。大人になると多くの人とふれあうことになるので、子どもの頃から他人とふれあう機会を増やしてあげることが大切です。

外発的動機付けが重要!越境活動で子どもの自信を育む方法

イ:人見知りをしてしまうお子さまや、コミュニケーションが苦手なお子さまに対しては、越境活動をするために、家庭ではどのようなサポートがあると良いのでしょうか? 

山:保護者の方が、外発的な動機付けをしてあげることが重要だと思います。

子どもの成長には、周りの大人が強制的にチャレンジさせる環境を作っていくことが効果的だと思っています。

たとえば、私の運営している「はたらく部」のイベントでは、人見知りで最初は返事をようやくするかしないかくらいの感じだった高校生が、グループワークを通していろんな人と関わる楽しさに気づいて、1年後には1000人の前でプレゼンするまでになりました。

あくまでもこれは一例ですが、「親にいわれたから来ました」「先生にいわれたから、しょうがなく来ました」などの外発的な動機付けがきっかけで、変わるお子さまは多いと思っています。参加してみて、その場が楽しかったら、「意外と楽しかったからまた次も行ってみようかな」ってなるわけです。

イ:もしも、保護者の方の外発的動機付けに対して、お子さまがネガティブな反応を示した場合は、どう接したらよいのでしょうか。

山:そういった場合は、「それでもいいんだよ」と、その子の存在をちゃんと認めてあげて、心理的な安全性を作ってあげてください。ただ、保護者と先生は子供を評価する人であるので、できれば第三の大人がいいと思います。

また、保護者の方が一緒に参加できるようであれば、お子さまが話しやすいようにサポートしてあげることも大切だと思います。たとえば「趣味を教えてください」と聞かれたら、一言は喋りますよね。そしたら、そこから話を広げていってあげましょう。

子どもたちは普段、学校で1限から7限まで、基本的には人の話をずっと聞く環境に身を置いています。そういう環境にいると、子どもたちは「自分が話していいのかな」と様子を見て、なかなか話はじめられないものです。

なので、話はじめられるように周りの大人がサポートをしてくれたり、話をしたら人が話を聞いてくれたという体験があるだけで、子どもたちの心の持ちようは大きく変わってくるはずです。

インタビュー後記(まとめ)

山本さんのお話にもあったように、子どもたちに大人になることや、働くことに前向きになってもらうためには、越境活動を通じて、子どもの頃から他人とふれあう機会を増やしてあげることが大切です。

お子さまに「大人になることや、働くことに前向きになってもらいたい」と感じている保護者の方がいらっしゃいましたら、外発的な動機付けなど、できることからはじめてみていただけますと幸いです。

また、山本さんの「はたらく部」や「comotto」でも、越境活動の機会を提供しています。この機会にぜひご活用ください。

<インタビューでご紹介した各種情報はこちらよりご覧ください>

はたらく部