「はたらく部」が実現する子どものやりたいことが見つかるキャリア教育とは
お子さまのやりたいことは、進路選択における重要な指針です。そのため、お子さま自身のやりたいことが見つかるように、できる限りサポートしたいと思っている保護者の方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、中学生・高校生のためのキャリアの部活「はたらく部」の代表を務める山本さんに、キャリア教育のあり方や、家庭でできるキャリア教育についてお伺いしました。
<インタビューをさせていただいた方>
はたらく部 代表 山本 将裕(やまもと まさひろ)さん。NTTドコモ 新事業開発部。 iU 情報経営イノベーション専門職大学 客員准教授。
<「はたらく部」とは?>
子どもたちが楽しく社会のことを学ぶことで、自らの人生の舵をとり、自信を持って未来を切りひらくことを支援するサービスです。中学生・高校生のためのキャリアの部活として、業界の第一線で活躍する現役社会人コーチが中高生の成長を親身にサポートしています。株式会社NTTドコモ docomo STARTUPの協力の元、株式会社アルファドライブが運営・提供しています。
子どもたちには自分の評価と関係ない場所が必要
インタビュアー(※以下、イと表記):キャリア教育について、山本さんはどのようにお考えでしょうか?
山本(※以下、山と表記):キャリア教育は「子どもは親が育てるもの」という考え方から「子どもは社会が育てるもの」という考え方にしていくことが大切だと考えています。
たとえば、昔は寺子屋で読み書きやそろばん、ほかにも仕事のことまで、寺子屋の先生が副業として子どもたちに教えてくれるシステムになっていました。
寺子屋のイメージで、キャリア教育の仕組み自体を考え直して、子どもが楽しそうに働く大人との接点を増やしていく必要があると考えています。
イ:今は、知らない大人に教わるのはもちろん、かかわること自体が危ないからやめなさいという時代ですものね。
山:そうなんです。子どもたちがかかわる大人は、保護者や先生が大半です。これは、子どもたちは常に評価される人と一緒にいるとも捉えられます。
実際に、先生は自分を評価する対象ですし、場合によっては保護者も自分を評価するわけです。もちろんすべての先生や保護者がこれに当てはまるわけではないですが、極端にいうと、24時間365日、上司と一緒にいるような状態かもしれません。
イ:もしそういう状態だとしたら、子どもたちもなかなか大変ですね。
山:そうですね。子どもたちには、自分の評価と関係ない場所をちゃんと作ってあげることが必要だと思っています。
こういった考えから、「はたらく部」は、評価者のいない場所になれたらと考えています。そのため、「はたらく部」では、学生のためのサードプレイスというコンセプトを掲げて、さまざまな職業経験のある大人を集めて、まさしく寺子屋のように仕事や将来に役立つ知識、マインドセットに触れられる場所をつくっています。
イ:「はたらく部」の講座は、マーケティングやプレゼンスキルなど、ビジネスにも直結するようなテーマを扱っていらっしゃいますよね。
山:基本的には、正解がないものについて考えてもらい、自分で何か問いを立てて取組めるスタイルでコンテンツを提供しています。
もちろん、こういうスタイルであれば、最初は緊張するお子さまがほとんどなのですが、やっぱり慣れていきます。最近も、大学受験の際に総合選抜で面接を受けた学生に話を聞いたのですが、「はたらく部の甲斐もあってか、全然緊張しませんでした」という話をしてくれました。
大学受験や社会が求める人材の変化に対する「越境活動」の価値
イ:大学受験形式は変わってきていますし、「はたらく部」で得られる体験の重要度は増している気がします。
山:そうですね。以前はペーパーテストの一般受験が主流でしたが、近年はアドミッション型・総合型選抜といわれる推薦受験の形式が増えています。
たとえば、東北大学は全てをアドミッション型の受験に変えると発表していますし、早稲田大学もアドミッション型と推薦の受験を6割まで増やすと発表しています。
実はこの流れの背景には、一般受験で大学に入った人の成績より、推薦受験で大学に入った人の成績の方が入学以降の成績がよくなるという傾向が影響しています。これは、推薦受験で入った人の方が、高い目的意識を持ってその大学に入学している傾向があり、大学入学後により勉強をすることが理由のようです。
また、企業も自立して考える能力を持つ人材を欲するようになってきているので、今後はよりアドミッション型・総合型選抜の傾向が強まると思います。
イ:社会の変化から、子どもたちに求められる経験や能力も変化してきているんですね。
山:そうですね。この流れに対応するには、保護者の方の意識を変える必要もあると考えています。テストの点数の良し悪しにこだわるのではなく、ボランティアなどの何かしらの「越境活動」を通じて、子どもたちが家庭や学校以外の大人とかかわる機会を増やすことを重要視する方が良いと思います。
子どもが将来やりたいことがない?親ができる一番のサポートとは
イ:保護者の方には、「お子さんが将来やりたいことがない」ということに不安を感じられる方も多いと伺います。そういった場合、保護者の方は何をすれば良いのでしょうか?
山:中学生くらいになると反抗期もあるので、「将来やりたいこと」を保護者の方には話さないものだと思っていた方が良いと思います。決して、やりたいことが何もないのではいと捉えていただくのが良いのではないでしょうか。
最近テレビで、子どもに対して「あなたが親にいわれて嬉しかった言葉は?」というアンケートをやっていたのですが、一番多かった回答は「何もいわれない」だそうです。「何もいわずに見守ってくれると、信用されていると感じて嬉しい。責任が出てやる気になる」とのことでした。
やりたいことは、もともと漠然としてモザイクがかかったようなものです。それをはっきりさせるためには、とりあえず外に放り出すことが重要です。だから何もいわずに、きっかけだけを提供するのが一番いいと思います。
イ:先ほどの保護者の方は「越境活動」を通じて、子どもたちが家庭や学校以外の大人とかかわる機会を増やすことを重要視した方が良いという話につながってくるのですね。
山:その通りです!
殻を破り可能性が広がる!「はたらく部」で子どもたちが得られる経験
山:「はたらく部」では「越境活動」を重要視しているため、「はたらく部」のコーチは、社外でも主体的な活動をしていたり、起業をしているなどコーチ自身が越境している方を採用しています。
イ:生徒にとっては、そういったコーチと話すこと自体が、家庭や学校以外の大人とかかわる「越境活動」になりますね。ちなみに、生徒とコーチが1対1で話す機会は多いのでしょうか?
山:「はたらく部」では基本的に1対20でワークをしていますが、生徒からコーチに相談にのって欲しいなどの要望があれば、1対1で話すこともできますし、グループワークで1対3人の形式でかかわる機会もあります。
オンラインなので、大人数と話すことが苦手なお子さまは、まずは大人数のなかで話を聞いてもらうところからはじめることで、安心して取組んでいただけるかと思います。
イ:オンライン以外のお取組みもあるのでしょうか?
山:オフラインでのイベントや合宿を学校と共同で開催することもあります。先日は立命館大学・高校さんのご依頼で、数日間で起業アイディアを作る合宿をやりました。
合宿では、生徒だけで街中へユーザーインタビューに出向いて課題を発見するなど、オフライン型特有の楽しみもありますね。
イ:そういう経験で殻を破っていく子どもたちがたくさんいらっしゃるような気がします。
山:殻を破る子どもはたくさんいます。大人になると、街中でのユーザーインタビューなどは躊躇しそうですが、学生のうちからこういう経験に慣れておけると、その後の可能性が大きく広がると感じます。
インタビュー後記(まとめ)
山本さんのお話にもあったように、お子さまが「やりたいことや興味のあること」を見つけるために、「越境活動」を通じて殻を破っていくことはとても大切なことです。
お子さま自身のやりたいことが見つかるように、できる限りサポートしたいと思っている保護者の方は、まずは山本さんがおっしゃっていた「何もいわずに、きっかけだけを提供する」ことからはじめてみてはいかがでしょうか。
また、山本さんの「はたらく部」や「comotto」でも、越境活動の機会を提供しています。この機会にぜひご活用ください。
<インタビューでご紹介した各種情報はこちらよりご覧ください>
はたらく部:https://hatarakubu.jp/