「育休」とはどのような制度?産休との違いや受けられる手当・支援をご紹介

「育休」とはどのような制度?産休との違いや受けられる手当・支援をご紹介

現行の育児休業について、具体的な支援や手当の内容をご存知でしょうか。本記事では、2020年に改正された「育児・介護休業法」のなかから、育休と産休制度をピックアップして詳しく解説します。現在、これらの取得を検討している方は、ぜひ、この記事をチェックしてください。

「育休と産休って何が違うの?」

「いずれは子どもがほしいと思っているけど、育休や産休って、誰でも取れるのかな」

「出産で仕事を休む場合、育休や産休中に受けられる手当や支援はあるの?」

 このように、共働きで子育てをするにあたって、育休や産休制度の内容を知りたいという方も多いでしょう。

本記事では、育休と産休との違いをはじめ、これらの休暇を取得できる対象や、受けられる手当や支援の内容について、具体的に紹介していきます。

この記事を読めば、改正後の育休や産休制度に対する理解が深まります。また、その知識をもとにすれば、夫婦で協力して子育てをするための環境を、段取りよく整えられるでしょう。

現在、出産を控えている方はもちろん、将来的に産休や育休の取得を検討している方は、ぜひ、本記事を参考にしてください。

記事のまとめ

  • 育休は男女両方が取得でき、子どもが1歳未満の間、最大で2歳まで延長可能である。
  • 産休は出産前後の休暇で、出産の6週間前から8週間後まで取得できる制度である。
  • 育児休業給付金は育休中に支給され、育児休業中は就業時間が制限されるため注意が必要である。

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育休と産休の違いは「期間」と「対象者」

共働き夫婦の子育てにとって、「産休(産前産後休業)」と「育休(育児休業)」は重要な制度です。言葉こそ似ていますが、取得できる期間や対象者には大きな違いがあるため、しっかりと内容を把握しておきましょう。

ここでは、「産休」と「育休」について詳しく解説します。現在、これらの休暇の取得を検討している方は、以下に挙げる項目を参考にしてください。

ただし、会社によって取得の条件が異なるケースもあるため、勤務先の規定をしっかりと確認しておくことをおすすめします。

出典:かながわあかちゃん|厚生労働省

育休はママとパパ両方がとれるもの

「育休(育児休業)」は、「育児・介護休業法」によって定められた、子どもを育てる保護者が、一定の期間、休暇を取得できる制度です。

この制度の対象となるのは、子どもを育てる保護者のため、男女の区別なく取得できます。

育休を取得するための条件は、子どもが1歳6か月を迎えたあとに、仕事への復帰が明らかであることです。2020年4月以前は、「勤続年数1年以上」という条件がありましたが、現在は、アルバイトやパートでも育休を取得できるようになっています。

さらに、2022年10月の「育児・介護休業法」の改正で、「産後パパ育休」という制度が設けられたことによって、より男性の育休が取得しやすくなりました。

この制度の特徴は、子どもの誕生から8週間以内に、パパが最大4週間までの育休を取得できることです。なお、この制度は2回に分割して取得することも可能です。

出典:育児介護休業法令和3年(2021年)改正内容の解説p.5|厚生労働省

出典:有期雇用労働者の育児休業や介護休業について|厚生労働省

育休は子どもが1歳になるまで認められる

育休とは、原則1歳未満の子どもを養育するために認められている休業制度です。パパはママの産休が終わった翌日や出産予定日から取得することが可能です。

なお、休業期間については、原則1歳までと定められていますが、例外として、待機児童問題で保育所に入所できない場合は、2歳まで延長することができます。

出典:育児介護休業法令和3年(2021年)改正内容の解説[2]1歳以降の育児休業|厚生労働省

産休はママが取得できるもの

産休とは、労働基準法で定められた、子どもを出産するママのための制度です。

出産前の準備や、出産後の回復・子育てのために休業できる制度で、対象者は出産する本人のみとなっています。

2022年の改正後は、パートやアルバイトも、一定の条件を満たすことで、産休を取得できるようになりました。

出典:有期雇用労働者の育児休業や介護休業について|厚生労働省都道府県労働局雇用環境・均等部(室)

出典:労働基準法における母性保護規定 ⅱ|厚生労働省

産休の期間は出産の6週間前と8週間後

産休を取得できる期間は、産前と産後で異なります。

産前休業は出産予定日の6週間前から(双子以上の場合は14週間前)、産後休業は出産の翌日から8週間まで取得が可能です。もし、実際の出産日が出産予定日から遅れた場合は、その日数も産前休業に含まれます。

産後休業中の労働については、原則産後8週間、女性の労働は禁止されています。ただし、産後6週間を過ぎ、本人から請求があった場合については、医師が認めた場合のみ、復職可能です。

なお、夫婦で子育てすることや、育休の延長を考えている場合は、「産後パパ育休」「パパ・ママ産休プラス」といった制度を利用するのもよいでしょう。

出典:労働基準法における母性保護規定 ⅱ|厚生労働省

出典:育児介護休業法令和3年(2021年)改正内容の解説|厚生労働省

出典:産前・産後休業を取るときは|厚生労働省

育児休暇と育児休業の違い

「育児休暇」と「育児休業」は、「子育てのための制度」という点では同じですが、内容には大きな違いがあります。

ここでは、育児休暇と育児休業それぞれの対象者や期間などについて、具体的に解説します。それぞれの特徴を把握し、実際に休暇を取得する際の参考にしてください。

育児休暇は会社が定めるもの

「育児休暇」とは、会社が独自に定める、育児のための休暇制度です。

取得期間や取得方法など、各会社の判断に委ねられているため、会社によって期間が異なる場合や、制度自体が存在しない場合もあります。

育児休暇の取得を検討している方は、勤務先の規定を確認しておきましょう。

育児休業は法律で定められているもの

育児休業とは、育児・介護休業法によって定められている、子育てのための休暇制度です。そのため、働くパパとママの両方が取得可能となっています。

取得期間は、原則1歳未満の子どもを養育する間です。ただし、保育所に入所できない場合、2歳まで延長が可能です。

なお、適用範囲については、2022年の法改正で「引き続き雇用された期間が1年以上」という要件が撤廃されたため、非正規社員も条件を満たせば利用が可能になりました。

出典:育児・介護休業法のポイントp.8|山形労働局

育児休業給付金の額は「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」

働くパパやママが育児休業を取得した場合、育児休業給付金を受給することができます。受給期間は、原則として、養育する子どもが1歳になるまでです。

この育児休業給付金は、働いている期間の給料から減額されて支払われます。育児休業給付金の計算方法は、「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」です。休業開始時賃金日額とは、育休に入る前の6か月間の賃金を、180日で割った金額になります。

ただし、67%の割合で支給されるのは、育休開始~6か月までで、それ以降は50%に減額されることを理解しておきましょう。

育休開始前6か月の賃金が1,200,000円だった場合、休業開始時賃金日額は1,200,000円÷180日=約6,667円となります。月額で計算すると、6,667円×30日×67%=約134,000円です。

6か月目以降は50%となるため、約100,000円となります。

出典:育児休業給付の内容と支給申請手続p.4|厚生労働省

給付金の入金は出産日から約4か月後

育児休業給付金の初回入金は出産日から約4か月後で、2か月分がまとめて支給されます。

原則として、生後8週間は産後休暇期間と見なされるため、育児休業期間がはじまるのは産後休暇が明けてからになるでしょう。

上記の理由で、出産後すぐに育児休業給付金を受け取ることはできないため、受給開始までは貯蓄で賄う必要があります。

出典:育児介護休業法令和3年(2021年)改正内容の解説|厚生労働省

出典:事業主の行う事務手続き第11章 育児休業給付について|沖縄労働局

出典:産前・産後休業を取るときは|厚生労働省

給付金を受け取るための4つの条件

育児休業給付の受給には、育休前と育休中の就業時間に関する条件があります。

育休前の条件は、雇用保険に加入していること、育休開始前の2年間で、11日以上就業している月が12か月以上であることです。

また、育休中の条件は、育休中の1か月ごとの就業日数が10日または、80時間以下であることとなっています。

産前産後休暇は、会社と雇用関係にある方が対象です。しかし、育児休業の取得には条件もあるため、転職して間もない場合は、育休が取得できない可能性があることに注意してください。

出典:育児介護休業法令和3年(2021年)改正内容の解説|厚生労働省

出典:育児休業給付の内容と支給申請手続p.2|厚生労働省

育休中の就業は月80時間まで

育休は、1歳に満たない子を養育するための休暇制度のため、基本的に働くことは想定されていません。

ただし、就業時間を月10日、80時間までに抑えられれば、育休期間であっても就業することは可能です。

なお、継続的に就業した場合については、育休と見なされず、育児休業給付金の受給対象外となる場合があることに注意しましょう。

出典:育児介護休業法令和3年(2021年)改正内容の解説p.19|厚生労働省

給付金以外の支援や手当

ここからは、子どもを育てるために、育児休業給付金以外に受けられる支援を5つ紹介します。

まずは、妊娠・出産にかかった費用や育児休業給付金にかかる税金について、どのように対応すればよいかを確認しておきましょう。

また、育休が明けてから役立つ制度についても解説するため、共働きでの子育てに活用できるよう、内容をしっかりと把握しておくことをおすすめします。

妊娠・出産における医療費の控除

妊娠・出産における自己負担分の医療費は、控除の対象になります。

そのため、出産・妊娠にかかった費用を含む家族全員分の医療費が、100,000円を超えた分については、所得から差し引く所得控除の申告が可能です。

ただし、医療費控除は年末調整での手続きができないため、会社勤めの場合でも、確定申告が必要なことには注意しましょう。

申告する医療費は、窓口で支払った自己負担額から、出産育児一時金や民間保険の給付金額を差し引いた金額です。

なお、差額ベッド代や病気予防のための医薬品、病院までの交通費などは、医療控除の対象外となります。

出典:No.1124 医療費控除の対象となる出産費用の具体例|国税庁

税金や保険料の支払いは必要ない

育児休業給付金は非課税のため、税金を支払う必要はありません。

また、健康保険料や社会保険料については、産休の場合と同様、所定の手続きをすることで支払いが免除されます。

雇用保険料についても、育休期間中に給与が発生しない場合は、保険料を支払う必要はありません。

出典:育児休業、産後パパ育休や介護休業をする方を経済的に支援します|厚生労働省

出典:【 産休と育休(お金のこと) 】|東京労働

子どもの看護のための休暇

「子の看護休暇制度」は、小学校の就学前の子どもを養育する労働者のために設けられた制度です。

この制度を利用することで、保護者は、子どもが病気やケガをした際の看護を目的とした休暇が取得できます。

原則として、対象の子ども1人につき年5日まで、2人以上の場合は年10日まで取得できます。また、日単位、半日単位、時間単位などでの調整も可能です。

子どもの発熱やケガは予測不能であるため、当日の申し出も可能となっています。

日雇い労働者を除く、パートやアルバイトの方も利用できる制度で、子どもを養育する労働者が対象であるため、パパも取得可能です。

出典:育児・介護休業法のポイントp.11|山形労働局

短時間勤務制度

短時間勤務制度とは、1日の所定労働時間を、原則6時間に短縮して勤務することです。

この制度は、3歳未満の子どもを育てる労働者が家庭と仕事を両立できるよう、事業主に対して義務化されています。

また、子どもが3歳以降も企業が短時間勤務の延長を就業規定で定めている場合、短時間勤務制度を取得可能でしょう。この制度の利用を考えている方は、勤務先の規定を確認することをおすすめします。

出典:育児・介護休業法のポイントp.7, 14|山形労働局

出典:育児介護休業法のあらましp.107Ⅸ-3 所定労働時間の短縮措置(短時間勤務制度) (第23条第1項) |厚生労働省都道府県労働局雇用環境・均等部(室)

育児・介護休業法による就業制限

所定外労働、時間外労働、深夜業については、育児・介護休業法で就業制限が設けられています。

所定外労働とは、3歳未満の子どもを養育する労働者に対して、所定労働時間を超えて勤務させることです。

時間外労働とは、小学校就学の始期に達するまでの子どもを養育する労働者に対して、1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせることをさします。

深夜業の制限とは、小学校就学の始期に達するまでの子どもを養育する労働者に対して、午後10時~午前5時の間に勤務させることを禁止することです。

これらの制度には、性別や雇用形態による制限がないため、パパはもちろん、パートや契約社員でも利用できます。

出典:育児・介護休業法のポイントp.7~8, p.12~13|山形労働局

パパの育休制度も改正された

ここでは、男性の育児休業取得促進について解説します。

パパとママの両方が育児休業を取得する場合、子どもが1歳2か月になるまでの間に、1年間休業することが可能です。

また、2022年に改正された「産後パパ育休制度」では、生後8週間以内に、4週間までの休暇を取得できるようになっています。

この休暇は、2回に分割して取得することもできますが、その場合は、休業予定日の2週間前までにまとめて申請してください。

出典:育児・介護休業法のポイントp.8|山形労働局

出典:育児・介護休業法 改正ポイントのご案内p.2~3|厚生労働省

制度や支援を活用して子どもとの時間を大切にしよう!

産休や育休は、共働きの夫婦にとって必要不可欠な制度です。

産休を取得できるのは女性だけですが、育休については、男性も取得が可能です。2022年の育児・介護休業法改正で「産後パパ育休」という制度が設けられたことで、男性が育休を取得しやすい環境もできています。

それぞれの制度の仕組みや、受けられる免除などをしっかりと把握して、上手に活用していきましょう。

これから出産を控えている方はもちろん、産休や育休の取得を検討している方は、これらの制度を正しく理解し、支援を活用して、子どもとの時間を大切にしてください。

出典:育児・介護休業法 改正ポイントのご案内|厚生労働省

出典:働きながらお母さんになるあなたへp.13~14|厚生労働省

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