中学校のプログラミング教育が必修化!目的と課題・実践例を解説
中学校でプログラミング教育が必修化されたことをご存じでしょうか。この記事ではなぜ必修化されたのか、目的や、外国のプログラミング教育の事例、プログラミング教育の課題や実践例などを紹介しています。中学校のプログラミング教育について知りたい方は、ご覧ください。
「中学校のプログラミング教育の目的ってなに?」
「プログラミング教育が必修化されてどう変わったの?」
中学校でプログラミング教育が必修化されましたが、疑問や不安がある方も多いのではないでしょうか。
この記事では中学校のプログラミング教育の必修化についてや海外での事例はどうなっているのか、どういう目的で必修化されるのかといったことを紹介します。この記事を読むことでなぜプログラミング教育の必修化が必要か、理解できるようになるでしょう。
またプログラミング教育における小学校と中学校の違いや、中学校のプログラミング教育の課題などについても紹介しています。
中学校のプログラミング教育について詳しく知りたい方は、ぜひこちらをチェックしてみてください。
2021年に中学校のプログラミング教育が必修化
中学校のプログラミング教育については、2021年にすでにプログラミングや情報セキュリティに関して充実させたものが全面実施されています。
中学校のプログラミング教育は、1989年の中学校学習指導要領でコンピューターの基本操作や、簡単なプログラムを作成することを指導するというものから始まりました。1998年には、中学校学習指導要領にプログラムと計測・制御についての指導が盛り込まれました。
現在はさらなるプログラミング教育の充実化が図られています。
海外におけるプログラミング教育の事例
海外でのプログラミング教育はどうなっているのか、イングランドやカリフォルニア州などの事例をもとに紹介します。
イングランドでは、2014年より「Computing」という教科で実施されてきました。ComputingはITとデジタルリテラシー、コンピューターサイエンスの3つで構成された教科になります。
授業内容は以下のようなものです。
・プログラマの作成・デバッグ
・アルゴリズムの理解
・コンピューターネットワークの理解
・情報技術の安全な利用方法
ただしComputingは新教科であるため、指導者の数の不足や専任の教員がいないという現実があります。今後は指導者の育成や新教科の普及などが課題になってくるでしょう。
カリフォルニア州では、そもそもプログラミングはカリキュラムに科目として規定されていません。そのため、プログラミング教育の実施は学校の判断に任せられています。
しかし、カリフォルニア州でのプログラミング教育への関心は高いため、今後義務教育化される可能性もあるでしょう。
中学校のプログラミング教育の目的
現在の日本は、サイバー空間とフィジカル空間を融合させたシステムによる新たな社会「Society 5.0」をめざしています。
中学校のプログラミング教育を充実させているのは、Society 5.0の実現に向けて必要な人材を育成するためでしょう。
現在は初等中等教育の段階でAI教育を強化するために、ICT環境の整備やクラウド化などを推進しています。
高度なプログラミングを学びたい学生向けに、部活動や地域のクラブで学べるようにする環境づくりも進むでしょう。
中学校のプログラミング教育における学習指導要領とは
中学校のプログラミング教育においては、学習指導要領総則が中心となり、プログラミング的思考や情報活用能力を重視し、各教科の特質を活かして教育課程を横断的に編成しています。
具体的には、技術・家庭科技術の「D情報の技術」分野においてプログラミングに関する指導が明示されています。
この指導内容は、実践的で体験的な活動を通じて情報の技術に基づく基礎的な理解を深め、関連する技能を身に付け、生活や社会、環境との関わりについて理解を促進します。
プログラミングに焦点を当てる際には、問題の発見と課題設定、構想とアルゴリズムの表現、試行・試作を通じた解決策の具体化、合理的な設計と解決作業の考え方などが中心の目標です。
「ネットワークを使った双方向性の持つコンテンツのプログラミング」「計測・制御のプログラミング」を通して、生徒たちは新しい考え方を養い、自らの問題解決とその過程を振り返り、改善・修正する態度を培います。
これにより、生活や社会における持続可能な社会構築に向け、実践的なプログラミング能力を身につけることが期待されています。
プログラミング教育における小学校と中学校の違い
プログラミング教育については、中学校だけでなく小学校でも行われるようになっています。小学校での必修化は2020年で、中学校よりも早く始まりました。小学校ではプログラミングを体験すること、プログラミング的な思考を育むことをめざしています。
しかし中学校では、プログラミング的思考を含め情報を活用する能力の育成までめざしているという点が小学校とは違っています。また、ネットワークを利用し、双方向的なコンテンツの問題をプログラミングで解決していくことも中学校では求められるでしょう。
中学校のプログラミング教育における課題とは
プログラミング教育にはさまざまなメリットがありますが、課題も存在しています。具体的には、ネットワークの脅威拡大の可能性やスキルを持った教員が不足していることなどがあります。
ここでは、中学校のプログラミング教育における課題について紹介します。
ネットワークの脅威拡大と管理能力の維持
ネットワークを使うため、不正アクセスやコンピューターウイルスといった脅威が拡大してしまう可能性があることと、管理能力の維持が問題になるといった課題があります。
たとえば、「Wi- Fiを利用する」には教育委員会などの権限が必要になることがあり、教員個人の権限では利用することができない場合があります。そのほかにも教員個人の権限では行えないものがあり、それらの管理について課題が発生していくでしょう。
プログラミング教育のために、これらの課題を解決することが必要になっていきます。
スキルを持った教員の確保
中学校でプログラミング教育が必修化するといっても、プログラミング教育を行えるスキルのある教員がいきなり増える訳ではありません。プログラミング教育の実施のために、スキルを持った教員を確保できるかどうかが課題になるでしょう。
また技術は日々進化しているため、昔は教えられた教員であっても、現在の技術は教えられないといったことが起こる可能性もあります。最新の技術を教員に学ばせるとしても、教員への負担は大きくなってしまうでしょう。
予算の確保
中学校でプログラミング教育をするにあたって、パソコンやICT環境の整備などに多大な費用がかかるため、予算の確保も課題となっています。
生徒数が多く予算の潤沢な中学校であれば、生徒1人1人にIT環境を用意できるでしょう。しかし生徒数や予算が少ない中学校では、人数分揃えることが困難になる可能性があります。
しっかりと予算を確保できるかどうかも課題になるでしょう。
中学校でできるプログラミング教育の実践例
中学校では、実際にどのようなプログラミング教育を行っているのでしょうか。
ここでは2つの中学校のプログラミング教育実践例を紹介します。実際に中学校でどのようなプログラミング教育が行われ、どのような成果が出ているのか事例をもとに紹介します。
【事例1】お掃除ロボットのシミュレーション
実際のお掃除ロボットが動く様子を見ながら、プログラミングを修正・改善し、動きをより良くするためのシミュレーションを行います。
お掃除ロボットの動きを見ることで、どのような意図でそういった動きになっているのか、よりしっかり掃除するためにはどのように動かせばいいのかを考え、プログラミングに活かします。
このシミュレーションでは、お掃除ロボットの開発エンジニアを疑似体験できます。
【事例2】チャットシステムの活用
中学校や社会の問題解決をめざして、チャットシステムの構築を行い、そのチャットの問題点の洗い出しを行います。
日本語のプログラミング言語を使って、チャットシステムを構築していきます。チャットシステムの活用では、ネットワークを介した双方向の通信への理解も深めていきます。
家庭でできるプログラミング教育の実践例
学校で習ったプログラミングや、家庭で行ったブログラミング教育をアウトプットする場として、以下のようなコンテンツがおすすめです。
【事例】ロボット月面レース
変形型月面ロボットSORA-Qを模して作られた「embotローバー」にプログラミングを行い、月面探査をイメージしたコースで走らせて競うレースです。
「embotローバー」を走らせるために、スピードや方向などをプログラミングします。参加者はスタッフの指示を受けることも可能です。実際に走るembotローバーを手に取り、プログラミングすることで、自分のオリジナルなローバーを作り上げることができます。
対象は小学1年生~6年生であるため、中学校のプログラミング教育を見据えて参加するとよいでしょう。
※2024年1月31日現在、応募を終了させていただいております。
中学校のプログラミング教育は実践的なものに変化している
2021年以降、中学校でもプログラミング教育が必修化され、内容も実践的なものへと変化しています。
これはよりAIやロボットなど、プログラミングを使ったシステムがより身近になってきたことが影響しているでしょう。今後もこの傾向は続くと考えられているため、早いうちからプログラミング教育をすることがおすすめです。