不登校の中学生に対して保護者はどう対応するべき?原因や高校受験のポイントを解説
中学生の子どもが学校に行かなくなってしまった、進学はどうなるのだろう、など不登校になったことで不安を抱えている保護者もいるのではないでしょうか。本記事では、不登校の中学生に対する保護者の対応、高校受験についてなどを紹介します。興味がある方はぜひ、ご覧ください。
「子どもが学校に行かなくなってしまったら、保護者はどうすればよいのだろう」
「中学校が嫌になる原因って何?」
「不登校の中学生の場合、高校受験はどうなるのかな?」
など、中学生の子どもの不登校問題に悩みを抱えている保護者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、中学生が学校を嫌になる原因や、子どもが不登校になったときの保護者の対処方法、不登校の場合は高校受験をどう考えればよいのかなどについて紹介しています。
この記事を読めば、子どもが不登校になったときの適切な対処方法がわかります。また、進路の悩みについての解決方法にも触れているため、子どもの将来を考えるうえで役立つ情報も得られるでしょう。
お子さまの不登校に悩んでいる方や、中学卒業後の不安を抱いている方はぜひ、読んでみてください。
中学生が不登校になる原因
中学生が不登校になる原因について、ここでは令和3年に行われた「不登校児童生徒の実態把握に関する調査報告書」のデータを例にとって見てみましょう。
中学生が不登校になった主な原因のなかで、全体から見た割合が高かったのは「身体の不調(32.6%)」「勉強がわからない(27.6%)」「先生と合わなかった(27.5%)」の3項目で、いずれも全体の3割前後を占めています。
しかし、不登校になる原因は1つではありません。上記の理由にほかの要因が加わっている場合もあるため、子どもによって対応方法が異なることに注意しましょう。
ここでは、中学生が不登校になる原因について、より細かい観点から見ていきます。
出典:不登校児童生徒の実態把握に関する調査報告書|文部科学省
原因が本人にある場合
不登校の原因が本人にあるときには、さまざまな要素が絡み合っている場合が多いでしょう。
たとえば、これといったトラブルに合ったわけではないのに、「なんとなく学校に行く気が起きない」と無気力になることがあります。この場合は、本人もなぜそうなっているか理由がわからないケースが多いです。
また、小学校から中学校という環境変化に対応できず、ストレスや不安を抱えた結果として不登校に陥ることもあるでしょう。
さらに、生活リズムの乱れも不登校の要因になります。ゲームやネットに熱中して夜更かしをして、朝起きられなくなってしまった子どもに多く、「夜は寝て朝は起きて学校へ行く」というサイクルを回せなくなっている状態です。
このタイプの場合は、最初は遅刻をしながらも登校していたものが、そのうち朝起きることが面倒になり、不登校になるというケースもあります。
上記のほかには、友達との遊びに夢中になって「遊びたいから学校へは行かない」といい出し、最終的に「家に帰りたくない、学校にも行かない」と非行に走った結果、不登校になるケースもあります。
出典:令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について|文部科学省
原因が家庭や親にある場合
家庭内が不和だったり、親子の関わり合いが難しい家庭だったりする場合も不登校につながることがあります。また、生活環境が急激に変化した場合なども不登校になりがちといえるでしょう。
家庭内の不和の問題には、親子関係ばかりでなく、両親が険悪、祖父母と両親の不仲、自分以外の兄弟の不和などが含まれます。家庭の状況に嫌気がさして、学校へ行く気が失せていることもあるでしょう。
親子の関わり方で問題を抱えている場合は、過干渉になっているか、逆に全く興味を示さない不干渉になっている可能性があります。
この場合は、「自分のことに構わないでほしい」「自分が何をしても(学校に行かなくても)興味を示さないんだろう」という反抗心がもとになっていることが多いでしょう。
両親の離婚や別居、家族の死など、家庭の生活環境の急激な変化も不登校の原因になります。これらが心の傷になって、学校へ行く元気が失われることがあるでしょう。
出典:不登校児童生徒の実態把握に関する調査報告書|文部科学省
原因が学校にある場合
不登校の原因が学校にある場合は、いじめがあった、友達関係や教師とのトラブル、学業の不振、部活動の不適応、学校の決まりが窮屈だったなどの理由が挙げられます。
いじめまでいかなくても、友達との関係性が悪くなってしまったことや、ちょっとした喧嘩などが原因になって、不登校になっている子どもも増えています。
また、中学の勉強が難しくついていけない、部活動がつらい、入学や進級で急激な環境の変化にストレスを受けた、などの内容も学校における不登校の原因として多いでしょう。
出典:不登校児童生徒の実態把握に関する調査報告書|文部科学省
不登校の中学生が卒業したあとはどうなるのか
不登校の中学生の子どもがいる保護者は「中学校で不登校になってしまうのだから、そのあとも引きこもりになり、社会生活が営めないのではないか」と不安になる方も多いのではないでしょうか。
中学生時代に不登校になっても進学をしている人は多く、進路の選択肢がなくなることはありません。
文部科学省の「不登校に関する実態調査」から、不登校だった中学生の卒業時の進路状況を見ると、「就職せずに高等学校等に進学した」が80.9%、「進学せずに就職した」が6.0%と、多くの生徒が進学・就労していることがわかっています。
この結果から、不登校だったからといって将来引きこもりになるという因果関係はないといえるでしょう。
引きこもりになる主な原因
不登校になって人とかかわることが減り、対人関係において苦手意識が芽生えれば、「誰にも会いたくない、かかわりたくない」という思いから引きこもりに陥る可能性はあるでしょう。
しかし、人が引きこもりに陥るきっかけは、不登校よりも、人間関係がうまく行かなかったことや、退職や病気が原因となるといわれています。
たとえば、社会人の場合は、「仕事を辞めてから働くことに自信をなくしてしまった」「病気になってしばらく外に出られず、それから外に出るのが怖くなった」などの理由から引きこもりになることもあります。
不登校の中学生に対して保護者がとるべき対応
不登校の中学生に対して、保護者がとるべき対応は、専門的な機関や学校の先生など周囲の力を借りることです。
不登校の問題は、家庭内だけで解決するのが難しい場合があります。むしろ、ずっと家にいることで子どもがますます学校に抵抗を感じ、不登校が悪化する可能性すらあるでしょう。
ここでは、不登校の解決に向けて保護者ができる行動を紹介します。
フリースクールなど学校以外の学びを検討してみる
学びの場は学校だけではありません。子どもに勉強したい気持ちがある場合は、家庭教師やフリースクールなどの利用を検討してみましょう。
フリースクールとは、不登校などの理由で学校に行けない子どもが、小学校・中学校・高校の代わりに過ごす場所です。在籍している学校の校長の承認があれば、フリースクールに通った日数を学校の出席としてカウントしてくれることもあります。
「家を出ることが嫌」という子どもの場合は、家に来て勉強を教えてくれる家庭教師の利用がおすすめです。家族以外との対人関係に慣れる意味でも期待できるでしょう。
出典:義務教育段階の不登校児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の指導要録上の出欠の取扱いについて|文部科学省
不登校支援団体に相談してみる
不登校の生徒の対応に慣れている専門機関を頼ることも大切です。公的な支援団体には、市区町村の子育て相談窓口、児童相談所、児童相談センター、教育支援センターや適応指導教室などがあります。このようなところに相談してみましょう。
不登校支援団体を利用することで、学習のサポートやメンタル面のフォローが受けられること、学校や家庭以外に居場所を作れることなどがあります。学校や家庭以外の人とかかわりを持つことで、自分の存在が認められていることを感じられるでしょう。
公立だけではなく、民間の小児科や児童精神科が対応してくれることもあります。発達障がいが関係している場合は、発達障がい支援センターがおすすめです。子どもの状態に合ったところを利用するとよいでしょう。
出典:不登校児童生徒による学校以外の場での学習等に対する支援について|文部科学省
出典:不登校を選んだ子のための外来|フローレンスこどもと心クリニック
保健室登校を子どもに提案してみる
クラスメイトとの交流が苦手などの理由から教室に行くのが嫌になり、不登校に陥っている子どもの場合、保健室登校を提案してみてもよいでしょう。保健室登校とは、教室ではなく保健室に行って過ごすものです。
保健室にはクラスメイトの存在がなく、1人で落ち着いた時間を過ごせるため、学校に行きたくない理由を解消できる可能性があります。学校に行くことへのハードルが下がれば、不登校の状況を変えられるでしょう。
保健室に登校できれば、学校に行けない罪悪感が薄まり、登校できている自分に自信がつくようにもなります。
担任の先生やスクールカウンセラーと緊密に連絡をしておく
家庭だけで何とかしようとすると、家庭の雰囲気が暗くなる可能性があります。
有効な解決策につなげていくためにも、子どもの状況などは、担任の先生やスクールカウンセラーと緊密に連絡をしておきましょう。
担任の先生やスクールカウンセラーに相談するだけでも、親子関係でうまくいっていない不安やストレスなどが和らぐことがあります。
スクールカウンセラーは、不登校解決に関して知識が豊富な専門家です。子どもの事情を考慮した適切な意見や、過去の経験などを踏まえた解決策が提示されるでしょう。
子どもの話をきちんと聞く
不登校の対応を考えるにあたって、まずは子どもを理解することが大切です。
子どもの話を聞いたあと、「学校に行かないと進路に響くよ、このままでいいの?」など不安を煽るのは避けましょう。状況によっては、子どもが心を閉ざしてしまいかねません。
保護者として、子どもに学校に行ってほしい思いがあったとしても、無理強いはしないようにしましょう。
本人の努力や我慢をねぎらう言葉をかける
子どもが「学校を休みたい」と伝えてきたときは、本人の努力や我慢をねぎらってあげましょう。
このようなとき、子どもは勇気を持って自分の気持ちを保護者に伝えている可能性があります。すでに苦しんで頑張った結果、学校に行けなくなったと理解しましょう。
「そっか、今日までよく頑張ったね」「ずっと大変だったんだね」など、穏やかな口調で子どもを受け入れることが大切です。
学校を休んでもよいことを子どもに伝える
不登校の子どもは、「学校を休むのはよくない」ということを理解したうえで、登校できないことを悩んでいます。
そんなときに保護者が学校を休むことを否定してしまえば、子どもは本心をいえなくなってしまうでしょう。
不登校の問題では、保護者が子どもの気持ちを受け止めることが大切です。
「学校を休んでもいいよ」と一言伝えるだけで、子どもの気持ちは楽になります。「ママ(パパ)は自分の味方だ」と感じられれば、相談しやすい親子関係を築けるでしょう。
受けやすい授業から出席させる
学校に対して、少しでもポジティブな気持ちになるように、子どもが好きな教科、得意な教科など、受けやすい授業から出席させてみるという方法もあります。
よい印象を持っている授業に参加して、少しずつ教室に慣らしていくことで、教室に戻りやすくなるでしょう。
転校も考えてみる
友達関係や学校側の問題で不登校に陥り、状況を変えることが難しい場合は、思い切って転校を考えてみるのも1つの方法です。
現在は、転校によっていじめや不登校などの問題が解消できると判断される場合、指定学校以外の学校への就学が許可されています。
学校が変わることで、人間関係をリセットできる、担任の先生が変わる、今までの学校に対する不満がなくなる、などのメリットがあるでしょう。
出典:10.就学すべき学校の指定の変更や区域外就学について|文部科学省参照
保護者が不登校の中学生とコミュニケーションをとる際のポイント
不登校の中学生とコミュニケーションを取るために、保護者からいきなり学校について話すことは避けましょう。不登校の子は学校に行けないことを悩み、進路などで不安を抱えているため、学校の話で追い打ちをかけてしまう可能性があります。
子どもが明るい気持ちになれるよう、できるだけ楽しく会話することが重要です。
しかし、なかには保護者と話したがらない子どももいるでしょう。そのような場合は、以下の内容を参考に子どもとの関わり方を考えてみましょう。
- 第三者との人間関係を築けるようにする
- こまめにたくさん会話をする
第三者との人間関係を築けるようにする
子どもが自分が不登校であることに罪悪感を持っている場合、保護者や担任を避ける可能性があります。
このような場合は、不登校のサポート団体などを利用しながら、人間関係を作ることが先決です。第三者を挟むことで子どもが冷静になり、悩んでいることや不安に感じていることを打ち明けられるようになる可能性があります。
第三者との人間関係を築けるようになれば、徐々に自信がつき、集団のなかに適応できるようになるでしょう。
こまめにたくさん会話をする
コミュニケーションの量が不足すると、親子の信頼関係が薄れてしまう可能性があります。日常の挨拶や、学校や勉強以外の話題でコミュニケーションを図れるようにしていきましょう。些細なことでも、子どもの話に耳を傾けるようにします。
ただし、子どもが負担を感じず、楽しい気持ちで会話ができるように、取扱う話題には気を遣う必要があります。たとえば、子どもの好きな話題、漫画、アニメなどから会話を切り出してみましょう。
不登校の中学生が高校受験をする際のポイント
子どもが中学校に行けなくなったことで、高校受験に関する悩みを抱えているという保護者も多いでしょう。不登校の場合でも、中学卒業後の進路については考えておく必要があります。
受験生が不登校の中学生の場合、高校側は、その生徒がどのような学校生活を送っていたのか、どういう生徒だったのかを確認するでしょう。
そのため、受験の際には以下の点に注意しておく必要があります。
- 受験対策をして学力を上げる
- 出席日数が足りているのか確認する
- 調査書の記載内容や内申点に注意する
受験対策をして学力を上げる
入学試験に筆記テストがある高校の場合、学力を求められます。どの程度の学力が必要とされるかは学校によって異なるため、まずは子どもの力量を把握して志望校を選ぶ必要があるでしょう。
しかし、不登校の子どもの場合、学校の授業を受けていなかったことで学力が低い状態になっている可能性もあります。
高校受験を希望する場合は、塾に通ったり、家庭教師を利用したりしながら学力をつけて行きましょう。
出席日数が足りているのか確認する
高校受験では、学力だけではなく中学時代の出席日数も重視されます。
出席日数は、受験生がどのような学校生活を過ごしたのかが記載された「調査書」に記入され、公立の全日制高校の受験の際に、審議の対象になります。
高校受験では、出席日数が基準値を満たしていないと不利になるため、まずは出席日数が足りているのか状況を確認しておきましょう。
ただし、私立高校では出席日数よりも学力を重視する学校も少なくありません。調査書が不要な高校もあるため、出席日数に不安がある場合はそのような高校を選択するのもよいでしょう。
調査書の記載内容や内申点に注意する
調査書を重視する高校を受ける場合は、調査書の記載内容や内申点に注意する必要があります。
調査書に記載されるのは、教科ごとの成績を点数化した「内申点」と、部活動や資格取得、コンクール入賞などの「行動の記録」です。
調査書の内容は、3年生のみの生活や成績が対象になる場合もあれば、1年生からの3年間分が対象となることもあるでしょう。高校によって、どの学年を評価するかは異なります。
たとえば、生徒のなかには「2年生のときだけ不登校だった」という人もいるでしょう。
この場合、学校によっては不登校期間について調査書に記載しない可能性もあるため、まずは担任の先生に確認しましょう。
不登校の中学生に対して保護者がとるべき対応を知ろう
不登校の中学生に対して、保護者はどういったコミュニケーションを取ればよいか悩んでしまうこともあるでしょう。将来を心配してきつく意見してしまうと、子どものプレッシャーになり、親子関係が悪化してしまいかねません。
本記事で紹介した保護者が行う対応方法を知り、できることから実践してみましょう。どのようなときも、子どもの気持ちに寄り添うことが大切です。
子どもが高校に進学する意思があるときは、担任の先生に相談し、受験可能な高校などの情報を収集してあげましょう。