水族館・動物園で子どもが生き物に「命の大切さ」を学ぶ!親が知っておきたい声かけと接し方

水族館・動物園で子どもが生き物に「命の大切さ」を学ぶ!親が知っておきたい声かけと接し方

生き物との触れ合いは、感情や情緒を育む情操教育に効果的だといわれています。そのため、お子さまに「いろいろな生き物と触れ合い、命を大切にできる子になってほしい」そう思って、水族館や動物館に連れて行かれる保護者の方は多いのではないでしょうか。

そこで今回は、保護者の方がお子さまを水族館や動物園へ連れて行くときにできる、情操教育に効果的な声かけやお子さまとの接し方を、水辺の生き物と触れ合えるイベントを開催している丹羽さんにお聞きしました。

<インタビューをさせていただいた方>

合同会社みずみずランド丹羽さん。「移動水族館」や生き物をテーマとした子ども向け情操教育教室・集客イベントの開催や運営、その他関連事業を展開。

小さな生き物も、自分たちと同じ命があると知ってほしい

インタビュアー(※以下、イと表記):丹羽さんの「みずみずランド」は、どのような体験を提供されているのでしょうか。

丹羽さん(※以下、丹と表記):園児を中心とした小さなお子さまを対象に、ショッピングセンターでの「移動水族館」や、幼稚園や保育園での出張授業を通じて、小さい生き物にも命があると身を持って体験してもらえる場を提供しています。

特に小さなお子さまは、生き物のことを何も知らずに生き物に触れ合うと、生き物をおもちゃのように投げてしまうなど、ぞんざいな扱いをしてしまうことがあります。

なので、子どもたちには、生き物と触れ合う前に「小さくても生き物にも命があるから優しく触ろうね。強く握ったり、投げたりすると、生き物も痛みを感じるんだよ」などと、小さな生き物にも自分たちと同様に命があり、痛みも感じ、ケガや死があることを、伝えた上で、生き物と触れ合っていただくような工夫もしています。

自然環境へ興味を持つきっかけにもなる

イ:生き物のことを事前に伝えると、子どもたちはどのような反応をするのでしょうか。

丹:授業では、生き物が住む環境の話などもしています。

例えば、ウーパールーパーは、メキシコのソチミルコという湖に生息しています。その湖の環境汚染により、ウーパールーパーの数が減っている話をすると、子どもたちも心に響いている様子を示します。

実際に子どもたちからは、「人間が環境を汚くしているのはショックだけれど、きれいにするのも人間ならできる。また湖をきれいにして、住みやすい環境にしてあげられたらよいな」などの感想もいただきます。生き物と自然環境の話は切り離せないので、自然に関しても気づきを得ることができますね。

イ:環境の話は一見少し難しく聞こえてしまいそうですが、子どもたちの心にも響いているんですね。

丹:子どもたちは、テレビで生き物や環境のことは見たことはあったとしても、やはり本物の生き物を見ながら話を聞くと、スッと入っていくようです。こういった話のあとに、生き物への餌やりなどの体験もするので、より意識に残るのでしょうね。「あの話がよかった、生き物が気になるからまた来た」などと、何度も参加してくださる方もいます。

イ:大人になるにつれ、「人間」と「それ以外の生き物」を区別して捉えてしまうことがありますよね。でも、子どものうちはそうした垣根があまりなく、生き物の話もより自分事として捉えられるからこそ、情操教育にもつながるのかなと思います。

「自分たちと違うこと」に興味を持ち、受け止められるように

丹:個人的な意見にはなりますが、人間と接するだけだと、人間だけの観点になってしまいますしね。例えば、人間には性別がありますが、世界にはいろいろな生き物がいて、種が変われば「オスとメス」がスタンダードでないこともあるんです。

映画のキャラクターにもなった魚のクマノミは、オスでもメスでもない状態で生まれ、群れの中で一番大きいクマノミが「メスになる」んです。そんな生態の生き物もたくさんいます。

自分が当たり前と思うことでも、一歩世界が変われば違うことがある。人間の社会でも同じですよね。日本を一歩出れば、全く異なるルールもある。子どもたちには、固定観念を持たずに、いろいろな考え方やあり方を受け止めることを、生き物を通して学んでもらいたいと思っています。

水族館で見るだけでは「ふーん」で終わることも、生き物の話を聞いてから見ると、感じ方が変わって、生き物に興味を持って、知りたい・考えてみたいという気持ちが芽生えると思います。

水族館や動物園では、子どもがイメージしやすくなる声かけを!

イ:水族館や動物園にお子さまを連れて行くシーンは、多くの保護者の方が経験すると思います。その際、どういった声かけや接し方が、お子さまの情緒や感受性によい影響を与えるのでしょうか。

丹:子どもが興味を持った生き物は、気が済むまでゆっくり見せてあげるのがよいと思います。そしてお子さまが、「〇〇食べているよ」などと自分からいってきたら、「すごいね、そうだね」といった共感・褒めをしっかり伝えてあげていただきたいです。

逆に、お子さまが興味がなさそうなときは、「ご飯は何を食べているんだろうね。リンゴが丸ごと置いてあるけど、そのまま食べるのかな?」「大きいうんちがあるね」など、子どもが身近に感じられるような話をします。特に、衣食住に関する話題は、小さな子でも想像がつきやすいですね。

生き物が苦手なお子さまや保護者の方はスモールステップで進めて!

イ:なかには動物全般が苦手なお子さまや、特定の動物を怖がるお子さまもいるかと思うのですが、その際はどのような受け止め方をしてあげたらよいですか。

丹:怖がるものを無理に触らせることはしません。私たちの授業でも、この動物は苦手だといわれることはありますが、「自分で触らなくても、触っているお友達の近くで見せてもらったら?」といった声かけをします。

また、生き物を持つのは難しくても「指でちょこっと、触れることはできる?」などと聞いてみたりもします。友達が触っていたら自分もできるかも!と感じる子どもも多いので、少しずつ段階を踏むと、最終的には生き物に触っていることもありますね。

親子の場合は、保護者の方が先に触ってお子さまをあんしんさせてあげたり、きっかけを作れば、勇気を出せるのではないでしょうか。

なかには保護者の方ご自身が、怖くて生き物に触れないという方もいらっしゃいますよね。保護者の方の「自分は苦手だけど子どもには経験させてあげたい」という気持ちは大事にしつつ、保護者の方ご自身も、無理はせずにできることからスモールステップで進めるとよいかと思います。

子どもが生き物に不適切な扱いをしてしまったら、叱る前に答えを引き出す声かけを

イ:子どもが生き物を叩いたり、投げてしまったり、生き物に対して不適切な行動をしてしまうこともあるかもしれません。子どもがそういったことをした場合は、保護者はどのような態度で対応するとよいですか。

丹:生き物は喋れなくても、嫌がったりはしますよね。「この子(=生き物)、痛いっていっているんじゃない? 自分が下に落とされたらどう思う?」などと、想像力で答えを引き出すような声かけをします。

すると子どもは、「落ちたら痛い」などと答えるので、「動物だって痛いよね。おもちゃじゃないから、優しく置いてあげようね」と、頭ごなしに叱るのでなく、自分に置き換えてもらえるような伝え方が大事です。

「本物に触る」ことで、より興味を持たせられる

イ:今の時代は、動画コンテンツでもさまざまな生き物を見られますが、リアルな触れ合いならではのよさは、やはりあるのでしょうか。

丹:デジタルは関心を持たせられる一端であり、リアルとデジタルにそれぞれのよさがあります。でも、「百聞は一見にしかず」ではないですが、間近で本物の生き物を見て触れる環境があると、さらに興味や知識を引き出せるのではないでしょうか。

例えば、イセエビとオマールエビでは、見た目は両方固そうですが、感触は全く違うので触ってみるととても面白がってもらえるんです。五感の中でも、触角は視覚の次くらいにインパクトがあると思っています。

触ってみる体験をできるところはなかなかないかもしれませんが、ぜひ生き物に触れ合う機会を探して、お子さまと一緒に足を運んでみてください。

インタビュー後記(まとめ)

今回は、「みずみずランド」の丹羽さんにお話をうかがいました。

お子さまと一緒に水族館や動物園などへ行く機会には、丹羽さんにうかがった「情操教育に効果的な声かけやお子さまとの接し方」を参考にしてみていただけますと幸いです。

また、「comotto」ではお子さまへの自然・環境の学びを提供しています。「comotto」もぜひご活用ください。

<インタビューでご紹介した各種情報はこちらよりご覧ください>

移動水族館みずみずランド 

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