思考力こそ未来の鍵!3Dプリンターの教育で自ら考え、創造する力を育む
海外では3Dプリンターを用いた教育の導入が進んでいるのをご存知でしょうか。3Dプリンターは、3次元的なデジタルモデルをもとにして、物体を作りだすことができる機械です。
扱うのが難しそうに聞こえますが、ソフトウェアの使いやすさの向上などから、日本でも「3Dプリンター(3Dモデリング)」を用いた学びが広がりつつあります。今回はそんな3Dプリンターを用いた教育の現場に迫ります。
<インタビューをさせていただいた方>
みらいのおねんど教室事業責任者 戸田(とだ)かえでさん。「みらいのおねんど教室」では「3Dプリンター(3Dモデリング)×プログラミング」の教育として、子どもたちがソフトウェアを使って3Dのモデリングを行い、作成したデジタル作品を3Dプリンターで出力して、実物を手にすることができます。
海外の教育では3Dプリンターが当たり前になりつつある
※画像提供:「みらいのおねんど教室」
戸:日本での3Dプリンターを用いた教育の実績は、現在は公立の小学校や中学校、高等学校ではほとんど例がなく、一部の私立学校やインターナショナルスクールで行っている程度です。ですが、中学校教育の中学校教材整備指針(案)に3Dプリンターが記載されるなど、日本の教育現場でも3Dプリンターの導入が検討されています。
また、海外では3Dプリンターを用いた教育は10年以上前からはじまっていて、当たり前になりつつあります。
イ:海外では、3Dプリンターをどのように活用されているのでしょうか。
戸:例えばイギリスは、先進国でいち早く3Dプリンターを教育に取入れました。もう10年以上前から導入されています。
イギリスでは、ピラミッドやローマのコロッセオなどの歴史的な建造物について勉強をする際に、それらの物を3Dプリンターで模型を作りながら学んでいきます。
3Dプリンターで模型を作る過程で、ピラミッドは何のためにあるのかという歴史的な背景や、当時使われていた建築の基礎に触れることができるので、学びが深まっていくという仕組みです。
また、アメリカでもすでに3Dプリンターを用いた教育がはじまっています。アメリカの小学校では、子どもたちが食物連鎖などの生態系について学び、生態系にかかわるものを3Dプリンターで模型にしていきます。その過程で、生物の多様性や環境問題について学びを深めていきます。
アジア圏では、中国の動きが目立っています。中国では、約40万校の小学校に3Dプリンターを導入して、3Dプリンターを扱える先生も育成するという取組みをはじめています。
教科書から飛び出す!3Dプリンターで学ぶ建築と生態系
イ:建築物や生態系に関して、教科書に載っている写真や図を見て学ぶだけでなく、実際に3Dプリンターで物を作りながら学びを深めていくのは面白いですね。
戸:子どもたちが、手を動かしながら学べるところは大きな魅力ですよね。
実際に経験をしながら学ぶことは、目で見るだけよりも吸収力が違いますし、知識の習得はもちろんのこと、実践力や創造性、学習意欲の向上にはすごくよい方法だと思います。
イ:「みらいのおねんど教室」で3Dプリンターを用いた学びを子どもたちへ提供されてきて、印象的だったシーンなどはあるでしょうか。
戸:絵が苦手というお子さまが、自然と楽しめて意欲的に成長していく姿は印象的でした。
最終的には私に「この前こう絵を描いたよ!」と、自分で描いた絵を見せに来てくれるようにまでなったんです。「みらいのおねんど教室」に来てくださる際に、絵が苦手なお子さまは多いのですが、克服している姿は多く見られます。
将来への夢が広がる!3D技術で叶える職業選択
※画像提供:「みらいのおねんど教室」
戸:ほかにも、3Dプリンターで出力をしたものが実際に販売されているというのを知ることで、「自分も将来販売できるようになりたい!」「この商品は、こうやって作られたんだ!」と話しはじめる子どもたちも多いです。
3Dプリンターを用いた学びは、想像以上に影響力があることを感じます。
また、立体的な模型でなくとも、3Dの作品をムービーにしてみたりといろいろな活用方法があるので、自分が大好きなアニメやゲームが、「実は3Dの技術を使って作られているのではないか」と疑問や興味を持って自分たちで調べてみたり、実際に3Dの技術に紐づいた求人サイトを見つけて、「僕は将来こういう会社に入る!」と話してくれたりするお子さまもいました。
イ:アニメやゲームなど、子どもの好きなものが身近に感じられると、子どもたちの学ぶ意欲もさらに上がりそうですね!
戸:「みらいのおねんど教室」で使っている3Dモデリングのソフトは、実際のアニメやゲームなどの制作会社で使われているものと同じなので、子どもたちもやる気が出ていましたね。
3Dモデリングソフトについて補足をさせていただくと、3Dモデリングソフトとは3Dプリンターで実体化したり、映画やゲームなどで使用するための3Dを作ることができるソフトをモデリングソフトといいます。
※画像提供:「みらいのおねんど教室」
「みらいのおねんど教室」で採用しているのは、主にZBrushというモデリングソフトで、「通称:デジタルねんど」と呼ばれています。
「デジタルねんど」は、映画やゲーム、アニメ、玩具、自動車、アパレル、ジュエリー、医療など、エンタメに限らず、幅広い業界に使用されているソフトなのですが、小学1年生のお子さまでも、直感的な操作で3Dを作ることができるため、これまで非常にハードルが高かった3Dモデリングが、このソフトを使うことでお子さまでもできるようになりました。
そして、「みらいのおねんど教室」はZBrush公認を受けている、子ども専門の教室です。
そのほか、子ども向けではTinkerCADという海外の教育現場で幅広く導入されている3Dモデリングソフトも「みらいのおねんど教室」では採用しております。
これらの3Dモデリングソフトを子どもたちが使用して3Dを作り、3Dプリンターを使用して立体的に捉えることで「空間把握の力」を身に付けることができます。また、頭のなかのイメージを実体化することで「創造力」や「思考力」「探究力」などの、STEAM教育の要素が詰まった多角的で横断的な考え方を身に付けることができます。これが「3Dプリンター(3Dモデリング)×STEAM教育」です。
家庭でできる思考力を育むお子さまへの働きかけ
イ:3Dプリンターや3Dモデリングを用いた学びには、すごく可能性を感じます。現在の日本では、3Dプリンターを持っていない方がほとんどだと思うのですが、興味を持った方が手軽にできることはあるのでしょうか。
戸:これからの時代は思考力がすごく重要になってきます。技術はどんどん進歩していくので、技術に合わせて自分で考えていく力が大切です。
なので、3Dプリンターを持っていなくとも、モノづくりであれば、どういう風にそのものができているのかを調べたり、想像をしてみたりすることからはじめてみてください。
具体的には、インターネット・本で調べる、実際に詳しい人に聞きに行ってみるなど、いろいろなことに疑問を持って、深堀りをしていく作業が大切だと思います。
インタビュー後記(まとめ)
戸田さんのお話にもあったように、モノづくりからはじまる経験は、お子さまの持っているたくさんの可能性に働きかけてくれます。
実際に、3Dプリンターを用いて経験をしながら学ぶことで、教科書などを目で見るだけよりも吸収力が高まり、実践力や創造性、学習意欲の向上にもつながります。
みなさまの子育ての選択肢の一つに、ぜひ3Dプリンターを用いた教育を加えてみてください。
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