保護者の⻭や口内環境がお子さまのむし歯に影響!? お子さまのお口の健康を守る正しいケア

保護者の⻭や口内環境がお子さまのむし歯に影響!? お子さまのお口の健康を守る正しいケア

お口の健康を守るため、正しいケアはできていますか。お口の病気は、重大な病気につながるリスクがあり、特に妊娠中の歯周病は胎児に悪影響を与える恐れもあるので注意が必要です。

また、お子さまが小さいうちは自分自身で十分なむし歯予防ができないため、保護者として歯のケアをしっかりサポートしてあげることが大切です。

そこで今回は、歯科業界のメディカルテック企業である株式会社SCOグループの広報の福田典子さんに、お子さまのむし歯予防で気をつけるべきポイントや、保護者として知っておきたい歯周病がお子さまに与える影響についてお話をうかがいました。

<インタビューをさせていただいた方>

福田典子さん:RKB毎日放送、テレビ東京で11年間にわたりアナウンサーとして活躍。現在はフリーアナウンサーとして活動しながら、株式会社SCOグループの広報も務める。

保護者からお子さまへむし歯はうつる?

インタビュアー(※以下、イと表記):お子さまのむし歯は、保護者からうつるなど保護者の影響があるものなのでしょうか。

福田さん(※以下、福と表記):むし歯自体がうつるわけではなく、むし歯の原因となる菌など口内細菌がうつってしまうことはあります。

イ:どのような行動が、お子さまにむし歯菌をうつすことにつながるのでしょうか。

福:食べ物や食器の共有、スキンシップをすることで、うつることが多いです。しかし、むし歯菌がうつってしまうのは仕方がないことで、むし歯菌を完全にうつさないようにするのは非常に難しいことです。そのため、むし歯菌をうつさないようにするために、お子さまとのスキンシップを完全になくすのも現実的ではありません。

そのため、最近ではむし歯菌をうつさない努力よりも、歯磨きをしっかり行う、定期的に歯科医院に予防歯科(メインテナンス)に通うことを重視する方が増えてきています。

イ:では、むし歯のない保護者の方からお子さまへ、むし歯菌がうつってしまうこともあるんですね。

福:そうですね。特に、現在むし歯がなくても、過去に一度でもむし歯になったことがある方は必ずむし歯菌がいるので、うつる恐れは十分に考えられます。

むし歯を招く、NGなおやつの与え方

イ:食生活もお子さまのむし歯の発生に大きな影響を与えるのでしょうか。

福:食生活の影響は非常に大きいです。砂糖だけでなく食事を摂ると、食事のなかの糖によってむし歯菌が活発化して酸を生み出すことで、口の中が酸性に傾いて、歯の表面を溶かしていきます。この状態が長く続くことは、むし歯になりやすい口腔環境が長く続いているということです。

ですから、砂糖だけでなく、甘いおやつやジュースを食事の合間にだらだらと食べてしまうなど、間食が多い方は、例え食事後に歯磨きをしっかりしていたとしても、口腔内が酸性に傾いている時間が長くなり、結果としてむし歯になりやすくなってしまいます。おやつを食べるのならば決まった時間にするなど、規則正しい食事がむし歯の予防策のひとつといえます。これは、歯みがきをしないと規則正しい食事だけではむし歯の予防はできないためです。

イ:食べる量が少なければ大丈夫というわけではないのですね。

福:そうなんです。特にこまめに与えがちなのがジュースで、哺乳瓶でミルクだけでなくジュースもあげている保護者の方は意外といらっしゃると思います。乳歯の時期は歯が柔らかくてむし歯になりやすいのですが、口の中をチェックしていなくて、お子さまがむし歯になってしまうまで気づかない保護者の方も多いです。

自分で判断して食べたり歯を磨いたりできないお子さまに、ジュースを与え続けるのは良い選択ではないと思います。たとえば、アメリカの小児歯科学会でも1歳までは水やお茶を推奨していて、100%果実ジュースであっても避けるべきとしています。フルーツを摂るならジュースではなく、食事の時に固形で摂ることをおすすめします。

イ:乳歯はいずれ永久歯に生え変わりますが、乳歯の時期にむし歯になると永久歯にも影響があるのでしょうか?

福:先生によって見解が異なりまして、乳歯のむし歯が永久歯の形成に影響を与えるとおっしゃる方もいらっしゃいます。確実に言えるのは、乳歯の段階でむし歯ができるような食生活を続けていると、永久歯に生え変わったあともむし歯になる可能性が非常に高くなるということです。むし歯を予防するためには、むし歯ができない食生活や歯磨きの習慣をつけること、定期的に歯科で予防歯科(メインテナンス)を受けることが大切だと思います。

日々の歯磨きと歯科での予防歯科(メインテナンス)で歯の健康を守る

イ:むし歯を予防するためには、歯磨きも大切になると思います。お子さまの歯磨きに関して、特に気をつけるべきポイントはありますか。

福:まず、縦磨きと横磨きの両方を行うことが大切です。特に前歯の裏側は縦磨きをすることで、歯面全体にしっかりブラシがあたり、溝にも、歯の側面に沿ってしっかりと磨け、溝にも歯ブラシ一本一本が入ってしっかり磨くことができます。

そして、保護者の方にお伝えしたいのは、仕上げ磨きについてです。歯科医師の先生や歯科衛生士さんにお話をうかがうと、「最後の乳歯が生え変わるまで仕上げ磨きをしてあげてください」とおっしゃいます。乳歯がすべて生え変わる時期となると、小学校の中学年や高学年頃になるので、反抗期がはじまっていると難しい部分もあると思います。ただ、大人でもきちんと磨けている人は少ないので、お子さまの磨き方では磨き切れていない子がほとんどだと思います。

また、むし歯になりかけの初期の段階であれば、歯は自分で再生する能力を持っています。この能力を再石灰化と呼びます。ですから、早く気づいてあげることが大切です。ただし、保護者の方の目で完全に見逃さないようにするのは非常に難しいので、定期的に歯科で予防歯科(メインテナンス)を受けることも大切だと思います。

歯科衛生士や歯科医師であれば、むし歯になりかけている状態でもすぐに見抜くことができます。何より、自分の歯を残すことは非常に重要です。初期のむし歯を削り、穴を開けて詰め物をするのは非常にもったいないことです。治療をしたとしても、本来の歯と詰め物のわずかな隙間から菌や歯垢が入り込み、数年後にまた再感染し、もっと広範囲に歯を削って再治療しなければならない、ということもあります。ですから、再石灰化によって歯の力で戻る可能性のある初期の段階で、気づいてあげることが大切です。

一日三回、毎食後に歯を磨くのはなかなか大変だと思いますので、特に頑張っていただきたいのは夜の歯磨きです。就寝中は口の中の細菌が最も増えやすい時間帯になるため、しっかり歯を磨いて細菌の量を極限まで減らしておくことが大切です。

お子さまが歯磨きを嫌がる原因と楽しく取組むためのポイント

イ:歯磨きが嫌いなお子さまもいらっしゃると思いますが、何が原因で歯磨きを嫌いになってしまうことが多いのでしょうか。

福:歯磨きを嫌がる原因の一つは「痛み」です。きれいに磨いてあげようとするあまり、力を込めて磨いてしまうこともあると思います。基本的に仕上げ磨きの際は、保護者の方はお箸持ちで歯ブラシを持ってください。そうすることで、程よい力で磨いてあげることができます。

また、上唇小帯という前歯の上にある筋の部分が特に痛みの原因になりやすいので、仕上げ磨きの際は指を歯茎に沿わせながら磨いてあげると、痛みを和らげることができます。

イ:お子さまに楽しく歯を磨いてもらうために、保護者の方はどのような点に気をつければよいのでしょうか。

福:YouTubeなどに歯磨きの動画もたくさんあがっているので、動画を見ながら歯磨きをするのもよいですし、アプリや歯磨きゲームなどもあります。こうしたツールを上手く活用することで、楽しく歯磨きができると思います。

また、SCOグループとしても歯みがきを楽しんでもらうための「ぺいたんとまほうのは」という絵本を制作しました。いろいろなコンテンツを活用して歯みがきタイムを楽しんでいただければと思います。

また、保護者の方がしっかり歯磨きをしている姿を見せることも大事です。「歯を磨きなさい」というだけでは、お子さまは理不尽に感じてしまうかもしれません。ですから、一緒に並んで歯磨きをする時間を作るのもいいかもしれません。

汚れを落とし、歯を丈夫に。歯磨きのポイントと歯磨き粉の重要性

福:また、お子さまが好きな味の歯磨き粉を使うことで、歯磨きを楽しんでもらうのも一つの方法です。そもそも、歯磨き粉は何のために使うのかご存じですか。

もちろん、歯垢を落とすための役割もありますが、歯磨き粉に含まれる成分を歯に浸透させることが重要です。

実は、歯ブラシだけでは全体の汚れの約6割しか落とせていないと言われています。というのも、歯と歯の間や、歯茎の境目に残る歯垢は、歯ブラシではなかなか取りきれません。お子さま用の味付きフロスもありますし、歯磨きの前にはフロスを使用することをおすすめします。

また、乳歯や永久歯が生えはじめる時期は歯の質が全く異なるので、特に気をつけていただきたいです。歯は3年ほどかけて硬くなっていくため、生えたての頃は柔らかくて傷つきやすく、むし歯になりやすいのです。逆にいうと、歯磨き粉の成分が浸透しやすいので、フッ素入りの歯磨き粉を使って歯磨きをすることで、将来的に丈夫な歯を作ることができます。乳歯や永久歯が生えはじめる時期や生え変わる時期は、特に注意が必要です。

イ:歯が生え変わる直前のぐらぐらしている時期では、歯磨きが難しいと思うのですが、そのような時期でもしっかり歯磨きをしてあげることが大切なのでしょうか。

福:確かに、歯磨きがしにくい時期もありますので、フロスやアルコールが入っていないフッ素の洗口液を上手く活用するのも良いと思います。ただし、やはり歯ブラシで磨くことが最も重要なので、できるだけ歯ブラシでのケアを心がけていただきたいです。

洗口液は口の中の浮遊している菌を除去するだけで、歯垢を取る力はありません。歯垢を取れるのはブラシだけで、歯磨き粉のようにペースト状のものを長く歯に乗せておくと、成分がしっかり歯に浸透します。

最近、大人の方も、とりあえず洗口液だけで済ませるというケースが増えているようです。たとえば、昼食後に商談があり、歯みがきをする時間がない場合など、口臭ケアの一時的な対応としては有効ですが、洗口液自体に歯垢そのものを除去する作用はないため歯みがきの代わりにはならないので注意が必要です。

しかし、そもそも口臭があるのは、おそらく歯周病が原因であることが多いと思うので、治すためには歯科医に通い、しっかりと歯磨きをする必要があります。根本的な原因を、しっかりと見直すことが大切です。

妊娠中の歯周病がもたらすリスク

イ:妊娠中の母親の口腔環境は、赤ちゃんやお腹の中の子どもに影響があるのでしょうか。

福:歯周病菌は、糖尿病や脳梗塞などさまざまな病気の原因になると言われています。歯周病は痛みがないまま10年、20年とかけて症状が進行し、歯の根っこが溶け切ってある日突然歯が抜ける恐れがある非常に怖い病気です。

なぜ歯周病菌が病気を引き起こすのかというと、歯周病になると歯ぐきが腫れて炎症を起こします。その炎症が原因で、歯磨きの際に毛細血管が切れ、歯茎から出血し、そこから歯周病菌が入り込みます。健康な人は約5分で全身の血液が循環するため、歯周病菌も5分もあれば全身に回ってしまうんです。「糖尿病の人が歯周病を治療すると症状が改善する※1」と言われているように、歯周病と健康は密接に関係しています。

※1 出典:歯周病と糖尿病|日本歯科医師会

しかし、妊婦さんの中で「歯科医院に行かなければならない」という意識は薄いように感じます。私自身も、リーフレットなどを通して妊娠中に歯科医院に行く必要があることは知っていましたが、当時はこれほど深刻なリスクがあることを認識できていませんでした。同じように、その重要性を十分に理解できていない方が多いように感じます。

イ:詳しく説明を聞くと妊婦の方にとって歯周病が非常に怖い病気だと理解できますが、単に「歯科医院に行かなければならない」と言われただけでは、ピンとこない方も多いかもしれませんね。

福:多くの方は、歯科医院を「むし歯ができたら行くところ」「痛みが出たら行くところ」と考えていると思います。しかし、予防歯科(メインテナンス)をしっかり行えば、むし歯は防ぐことができますので、定期的に予防歯科(メインテナンス)には通っていただきたいです。

特に妊娠中は、つわりがひどくて歯磨きもできないこともあると思います。また、妊娠中は口腔環境が大きく変わりやすく、食べられるものも変わってきて規則正しい食生活を送ることも難しくなるため、むし歯になりやすくなります。妊娠前から歯科医院に定期的に通い、信頼関係を築いておくと、不安の多い妊娠時もあんしんして歯科医院に通えると思いますし、環境を整えておくことは大切だと思います。

イ:むし歯があると外科手術ができないと聞いたことがありますが、これは実際に起こりうることなのでしょうか。

福:むし歯があると手術ができない場合もあります。むし歯菌は空気中に浮遊してうつることもあるので、むし歯予防に力を入れている歯科医院では、隣の患者にむし歯菌が移らないように完全個室で治療を行うこともあります。

さらに、帝王切開で出産した場合、母親のむし歯菌が赤ちゃんにうつる可能性が高くなると一部の記事で紹介されています。どうしても麻酔が必要な場合は麻酔を行うことになると思いますが、麻酔によってむし歯菌や歯周病菌が全身に回る可能性があるため、手術をおすすめできないことは大いにあると思います。

信頼できる歯科医院を見つけ、定期的な予防歯科(メインテナンス)でむし歯を予防しよう

イ:お話をうかがって、むし歯を予防するためには歯科医院に通ってメンテナンスを行うことも非常に重要だと感じました。歯科医院を選ぶ際は、どのようなポイントに注目すれば良いのでしょうか。

福:まずは、近所にある歯科医院や評判のいい歯科医院に行ってください。そして、たくさん質問をしてください。質問にていねいに答えてくれて、関連する情報まで教えてくれるような歯科医院さんは、患者一人ひとりに対してしっかり時間を取ることができる歯科医院です。そういった歯科医院を選ぶと良いと思います。

患者さんの予防や意識を変えることに重きを置いている歯科医院さんであれば、たとえば「この磨き方ではここが磨けていないので、注意して磨いてください」といった具体的なアドバイスもしてくれるでしょう。

コミュニケーションがしっかり取れる歯科医院さんを見つけ、可能であれば何も問題がなくても2〜3か月に一度は通いクリーニングを受けることが、一番のむし歯予防につながると思います。

お子さまの歯のケアももちろん大切ですが、保護者の方のケアも大切です。お子さまのために歯科医院を探す際には、ぜひご自身の歯科医院も見つけて通われることをおすすめします。

インタビュー後記(まとめ)

むし歯を防ぐには、おやつを与える量よりも頻度に気をつけなければいけないなど、記事を通してはじめて知る情報もたくさんあったのではないでしょうか。お子さまをむし歯から守るためには、保護者の方が正しい知識を身につけ、適切なケアを行う必要があります。

また、妊娠中の歯周病は胎児に影響を与える可能性もあり、ご自身のケアにも十分な注意が必要です。

時にはプロの手も借りながら親子で楽しくお口のケアに取組み、しっかりお口の健康を守っていきましょう。

株式会社SCOグループ公式ホームページ: https://www.scogr.co.jp/HANIKAメインテナンスクリニック(監修):https://hanika-mc.jp/