子どもをインターナショナルスクールに通わせるべき?教育の専門家に聞く!学校選びのヒント

教育業界が大きく変化する中、子どもの進路や学校選びに悩む保護者の方も多いのではないでしょうか。今回は、教育現場の最前線で活躍するキンダーキッズ中山さんと香里ヌヴェール学院校長池田さんによる対談の模様をお届けします。学校選びのヒントが得られる内容となっていますので、ぜひご覧ください。
<インタビューをさせていただいた方>

中山貴美子さん:株式会社キンダーキッズの代表取締役社長
池田靖章さん:香里ヌヴェール学院中学校・高等学校の学校長
<香里ヌヴェール学院中学校高等学校>
1923年創立されたカトリックミッションスクール。2017年度より女子校から共学化し、廃校危機から現在1000名を超える学校に生まれ変わる。探究学習をベースに経験主義的教育を実践。その成果としてキャリア甲子園日本一などがある。また進路実績としても、国内だけでなく、アメリカのワシントン大学など世界トップ大学に進学する生徒が30名以上いる。
URLはこちらから:香里ヌヴェール学院 |学校法人 聖母女学院
<キンダーキッズインターナショナルスクール>
“日本の心と、英語の力“を大切にした独自カリキュラムを展開。国内外に31拠点を構え、カナダやハワイでも日本と同じプログラムを提供している。ネイティブの小学2年生レベルの読み書きを目標に、卒園後も使える本物の英語力を養成。
卒園生向けのGrad Clubも含め、現在は約6,000名が在籍。
URLはこちらから:キンダーキッズインターナショナルスクール
「インターナショナルスクール」と「一条校」の違いとは?
中山さん(※以下、中):近年は、日本全国でインターナショナルスクールが続々と開校しており、インターナショナルスクールへ興味をお持ちの方も多いと思います。実際に私が代表を務めるキンダーキッズで未就学の時から英語を学ばせているご家庭からも、卒園後の進路についてのご質問を多くいただきます。
また、小学校以降も英語を学ばせたいご家庭の選択肢として、貴校のように学校法人で国際科を設置し、英語教育に力を入れている学校もあります。まずは、インターナショナルスクールと貴校のようないわゆる「一条校」とよばれる学校の違いについて教えていただけますか。
池田さん(※以下、池):「インターナショナルスクール」と、いわゆる「一条校」には、大きな違いがあると考えています。一条校は、学校教育法に定められたカリキュラムや生活の支援、文部科学省の学習指導要領に則って教育を行う学校です。
※一条校とは
公立校か私立高かにかかわらず、学校教育法第1条に記載がある学校を総称して一条校と呼ばれる。一般的な小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、大学、高等専門学校、盲学校、聾学校、養護学校及び幼稚園をさす。
一方、インターナショナルスクールは、もともとは日本に在住する外国籍の児童を対象とした学校であり、授業がすべて英語で行われるといった違いもあります。細かな違いは多々ありますが、法律上の位置づけが根本的に異なる点が大きな違いといえます。
中:一昔前か二昔前頃に、小学校から子どもを神戸のとあるインターナショナルスクールに入れようと考えたことがあったのですが、結局入学は叶いませんでした。当時、学校側から「インターナショナルスクールは、日本在住の日本人のための学校ではありません」とはっきりいわれたのを覚えています。しかし、現在は状況が少し変わり、日本在住で両親が日本人で家庭の言語が日本語であるお子さまでも、インターナショナルスクールに通うケースが増えているように感じます。実際、状況は変化しているのでしょうか。
池:おっしゃるとおりで、一昔前といってもほんの20年ほど前の話ですが、当時は外国人の駐在員向けに作られている学校が非常に多かったです。しかし、近年の国際化に伴い、ご両親ともに日本語を話すご家庭のお子さまでも一定の基準を満たせばインターナショナルスクールに入学できるように、入学条件がどんどん緩和されています。実際、現在は駐在員のお子さまよりも、日本人の生徒のほうが多いインターナショナルスクールも増えてきています。
中:保護者にとっては、昔に比べてインターナショナルスクールなどの外国人学校に入学しやすくなったことは、選択肢が広がるという意味でよろこばしいことだと思います。一方で、インターナショナルスクールに通うと日本語はどうなるのか」といった心配もあると思います。実際、インターナショナルスクールに通うとなると、日本語の習得に関しては諦めざるをえないのでしょうか。
池:そもそものインターナショナルスクールの建付けが「オールイングリッシュ」なので、カリキュラムや休み時間の会話も英語が中心です。一方で、一条校の国際コースなど学習指導要領に則った学校では、日本語をベースにした授業が基本となります。この点がインターナショナルスクールとの大きな違いです。特に日本国内では、国際コースであっても完全なオールイングリッシュの環境を整えるのは難しく、日本語ベースで運営している学校が大半だと思います。
中:オールイングリッシュで運営されているインターナショナルスクールでも、100%英語というわけではなく日本語の学習も行われますよね。子どもたちは両方の言語を学ぶことになるので、大変ではないのでしょうか。
池:もちろん大変な部分もありますが、家庭でどの言語を使っているかが大きなポイントになると思います。たとえば、家庭では日本語で生活しており、「学校では日本語と英語の両方を使う方がいい」と考えるご家庭もあれば、「学校ではすべて英語で学んでほしい」という方針のご家庭もあります。そうした価値観の多様性が、今の時代にはより顕著になっていると感じます。
中:日本語と英語の両方を学ぶことは、子どもたちだけでなく先生にとっても大変ではないですか。
池:はい。本当に大変で、その理由はいくつかあります。一つは、新型コロナウイルスの影響や、円安の影響で「日本で働いても儲からない」と考える外国人が増え、教師の確保が難しくなっています。こうした学校側のオペレーションの問題があります。
「インターナショナルスクール」と「一条校」、どちらを選ぶべき?
中:インターナショナルスクールと一条校、どちらを選ぶべきかについては、私たちにも多くの相談が寄せられます。池田先生はどのようにお考えですか。
池:将来、どのような進路をめざすかが重要なポイントになると思います。お子さまにどのように成長してほしいのか、それぞれ考えていることがあると思いますが、まずはご両親の間で方向性が一致しているかを確認することが大切です。
たとえば、「日本社会に適応してほしい」「日本における社会性を身につけてほしい」と考えているなら、日本人としての価値観や社会性の基礎は日本の小学校で形成される部分が大きいので、一条校を選ぶのも一つの選択肢だと思います。
一方で、そのような願いがないのであれば、自由な発想で自分の思いを表現できる力を養える、インターナショナルスクールの方が適しているかもしれません。将来からバックキャストして考えた方がいいのではないかと思います。
中:しかし、多くの日本人のご家庭では、「日本語ができなくても構わない」という考えには、なかなかならないと思います。実際に、キンダーキッズでは国内28校、海外3校、計31校を展開しており、現在、海外ではカナダ校とハワイ校を開校しています。そうしたキンダーキッズを卒園したお子さまの多くは、一条校の国際化に進学しています。
たとえば、キンダーキッズである程度の英語力を身につけたお子さまが、卒園後は英語教育に力を入れている国際化のある小学校へ進学し、中学からインターナショナルスクールに進むことは可能なのでしょうか。
池:物理的には可能です。実際、小学校の6年間で日本の社会性を身につけ、中学校からインターナショナルスクールへ進学するケースもあります。ただし、注意点が1つあります。
インターナショナルスクールの中学・高校では、基本的にアメリカやヨーロッパのカリキュラムが採用されているのですが、実は日本の文科省のカリキュラムの方が難易度は高いのです。
PISA型の世界基準のリテラシーをチェックするテストでは、日本は常にトップクラスにランクインしています。数学的なリテラシーも上位3位以内には入ってきますし、科学的なリテラシーも高いです。それほど日本の小・中学校のカリキュラムのレベルは高く、公立も含めて日本人は高いレベルにあることを、まずは理解しておく必要があります。
日本と海外で異なる教育制度。「履修主義」と「修得主義」の違い
池:保護者の方に知っておいていただきたいのは、教育には「履修主義」と「修得主義」があり、この2つは根本的に考え方が異なるということです。
日本で採用されているのは履修主義です。簡単にいうと、たとえば中学1年生のテストで0点を取っても、2年生に進級することができます。さらに、2年生で0点でも、3年生に進むことが可能です。高校で赤点を取った場合も、追試を受けることで進級が認められます。極端にいえば、出席さえしていれば学年は上がっていくということです。
一方、世界では基本的に「修得主義」が採用されています。これは、獲得した知識が一定の基準に達した場合に単位が認定されるという考え方です。そのため、落第が起こることもあります。
中:中学でも落第があるということですか。
池:はい、当然です。たとえば、日本にあるインターナショナルスクールで、中学1年生の内容をしっかり修得できなかった場合、再度1年生をやり直すことになります。世界では、このアプローチの方が子どもたちに優しいと考えられています。理解していないのに進級させる方が不親切だという考えなのです。
インターナショナルスクールのように、国際バカロレアを導入するということは、当然修得主義を採用するということです。日本向けに少しオーガナイズされている部分もありますが、基本的には修得主義であることを理解しておくべきです。また、めったにないことですが、何度も落第を繰り返すと退学になることも、学校によってはあると聞いたことがあります。
中:お子さまにしっかり勉強させる姿勢が、家庭においても重要になるということですね。
池:おっしゃるとおりです。その認識があれば、ミスマッチは起こらないと思います。「しっかり知識を獲得して進級しなさい」という指導が家庭でもできれば、Win-Winな状況になると思います。
中:たとえば、お子さまをインターナショナルスクールに通わせるとなると、保護者の方が英語ができない場合は家庭での学習サポートが難しくなると思います。その点について、どのようにお考えですか。
池:その点は、大きな課題になっています。特に英語のバカロレアは難易度が高いため、保護者の方のサポートが重要になります。私の息子は現在公立小学校に通っていますが、宿題等で親の手伝いが必要となる場面は少なくありません。学校の形態にかかわらず、ある程度の家庭でのサポートは必要になります。
中:改めてお伺いしますが、日本人の方はインターナショナルスクールと一条校のどちらを選ぶのがよいのでしょうか。
池:ご家庭の考え方が重要だと思います。将来的にお子さまに海外でグローバルに活躍してほしいのか、それとも日本での活躍や日本社会への適合を望んでいるのかで、選ぶ道は変わってくると思います。その点を、まずはご家庭でしっかり話し合うことが、最適な選択への一番の近道だと思います。
中学入試でも面接を導入する学校が増えている
中:先生も受験の面接を担当されることがあるかと思いますが、その際、どのような点を重視されていますか。
池:身だしなみを重視する学校もあると思いますが、当校ではその点はそれほど重要視していません。それよりも、子どもたちが何に関心や好奇心があるのかを重視しています。実際、多くの学校が「好奇心」という要素に注目しています。
小学校受験では「ペーパーテストでしっかり点を取らなければいけない」と考え、お子さまを幼児教室に通わせるご家庭も多いと思います。もちろん学力も大切ですが、それ以上に「子どもが何にワクワクするのか」「どんなことに興味を持っているのか」を見極め、当校でその可能性を伸ばせるかどうかを重視しています。
面接では、お子さまの関心をどこまで引き出せるかが、私たちの大切な役割です。実は、日本の大学受験のシステムも、こうした考え方に近づきつつあります。
中:今後、AO入試の割合が増えていくといわれていますよね。
池:「総合選抜型入試」という名称が使われていますが、「あなたは何者で、何がしたいのか」という問いは、海外の大学では必ず聞かれることです。日本でも同様の手法を取り入れようということで、文部科学省は総合選抜型入試の割合を約30%まで引き上げる方針を掲げており、実際その目標に近づきつつあります。
こうした流れもあり、従来の暗記中心の学習は少し割合が減ってきており、中学受験や高校受験におけるインプットの重要性も今後大きく変化していくと思います。最近では中学入試でも面接を導入する学校が増えており、当校でも中学入試において面接を実施しています。
また、インターナショナルスクールに通うお子さまが一条校を受験するケースも増えています。しかし、インターナショナルスクールの小学校は、中学入試と互換性が悪いんです。というのも、特に関西では、多くの中学入試が国語・算数・理科・社会の4科目で評価されます。最近では、英語入試を導入する学校も増えつつあり、当校でも英語でのインタビューを通じて受験生の対応力を測る入試を実施していますが、こうした動きはまだまだ少ないのが現状です。
首都圏・海外の大学への志願者が増加中
中:最後に、貴校の卒業生はどのような大学に進学されることが多いのでしょうか。
池:関西には多くの大学があり、以前は関西の学生は地元にとどまる傾向がありました。しかし、近年は首都圏の大学を志望する生徒が大幅に増えています。
その背景には、就職活動の変化があります。以前は大学2〜3年生頃から就職活動をはじめるのが一般的でしたが、現在は1年生のうちからインターンに参加し、早い段階で動き出すのがあたり前になっています。2年生の段階で内々定を獲得するケースも増えており、インターンシップの多くが東京で実施されることから、「東京に行きたい」という方が徐々に増えている状況です。
また、海外の大学を志望する生徒も多くなっています。理由としては、英語力を生かしたいというのが一つあると思います。当校でも、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、オランダ、ベルギーなど、幅広い国の大学へ進学するケースが増えています。
社会の変化とともに変わる教育
中:これまで、学校法人が積極的に営業活動を行っている印象はそれほどありませんでした。しかし、少子化の影響もあり、今後は新しいコースの設置などさまざまな取組みが進み、状況が大きく変わっていきそうですね。
池:首都圏では人口減少の影響は比較的緩やかですが、地方では減少が加速しており、特に関西ではその傾向が顕著です。わかりやすくいえば、約10年後には定員数からすると20〜30%の学校が不要になると予測されています。
中:そうなると、単純に入学しやすくなるということですよね。
池:入学のハードルは下がります。しかし、現在国では授業料無償化の議論が進んでおり、その影響で私立高校を志望する生徒が増えているため、実は私立高校には追い風の状況となっています。そのため、それほど人気のない公立高校は、入学しやすくなっているというのが実情です。
中:本当に行きたい学校を選べる時代になってきてはいるものの、公立校の人気が低下する可能性もありますよね。
池:公立校は、良くも悪くも画一的な教育を提供できる点が特徴です。ただ、特色を打ち出すのは難しい面があります。というのも、公立校では教員の異動があるため、統一された教育スタイルの方が運営はしやすいのです。
一方、私立校では、一度就職すると永続的に勤める方もいらっしゃいます。そのため、職がなくなることへの危機感や、民間の要素が強いこともあり、独自の特色を打ち出そうとする傾向にあります。
たとえば、当校にも多くの視察が訪れますが、国際化を検討している学校も少なくありません。当校では、3か月や1年留学し、単位互換できる制度があります。こちらは全コースの生徒を対象とした制度で、いわゆる普通コースで1年間留学に行っている生徒もいます。国際コースよりも、さらにカリキュラムを広げていく時代になっているのかなと思います。
中:大変勉強になりました。お話を伺い、さまざまな選択肢があることや、社会が変化していることに改めて気づかされました。今の時代、やはり情報は重要になると思います。ぜひ、ご家庭でも情報をしっかりとキャッチし、お子さまにとって最善の進路を選ぶための話し合いの機会を持っていただければうれしく思います。
URLはこちらから:香里ヌヴェール学院 |学校法人 聖母女学院
URLはこちらから:キンダーキッズインターナショナルスクール