「モンテッソーリ教育」とは?具体的な内容や実践方法をご紹介
モンテッソーリ教育が、子どもにどのような影響を与えるか知っていますか。本記事では、子どもがモンテッソーリ教育を受けるメリットや、実施するために必要なことなどを紹介します。モンテッソーリ教育に興味がある方は、ぜひ参考にしてください。
「モンテッソーリ教育とはどんな教育なのかな?」
「教育を受けた子どもは、どんな力が伸ばせるのか知りたい」
「モンテッソーリ教育を受ける際に気をつけるポイントはあるのかな」
など、子どもの保育園や幼稚園を探すなかで、「モンテッソーリ教育」という言葉を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
本記事では、モンテッソーリ教育がどのような教育なのかをはじめ、教育の詳しい内容、子どもに受けさせるときに気をつけるポイントなどを紹介しています。
また、家庭でできるモンテッソーリ教育についても紹介しているため、この記事を読むことで、効果的な取組み方がわかるでしょう。
モンテッソーリ教育に興味のある方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
「モンテッソーリ教育」とは
モンテッソーリ教育とは、子ども自身に備わっている、自己教育力を前提に考えられた教育法です。
100年以上前のイタリアで、マリア・モンテッソーリ博士が考案したこの教育法は、今もなお世界中で支持されています。
モンテッソーリ教育は4つの考え方に基づいており、子どもの自立や他人への思いやり、常に学び続けようとする力などを育てることを目的としています。
特徴1:子どもの自己選択を大切にする教育
モンテッソーリ教育では、子どもの自己選択を大切にしています。子どもが自分で選ぶことで、自立心を育むことができるという考え方です。
子どもから大人になる過程には、常に何かを選択することがつきまといます。しかし、自分で判断し選択するという力は、大人になって急に身に付くものではありません。
子どもの頃から、さまざまな状況で選択する経験を積み重ねることが大切です。
特徴2:子どものやりたいことを大切にする教育
子どもの気持ちに寄り添って行動を見守ることは、簡単ではないでしょう。
なかには、子どもの挑戦を見ているうちに、自分の考え方や思いを押し付けてしまった経験がある方もいるのでははないでしょうか。
しかし、親や周りの大人から指示されてすることは、自己教育力にはつながりません。
子どもの「やりたい」という気持ちを尊重することで、「親にやらされた」ではなく、「やりたいことができた」という達成感が得られます。
特徴3:自分で判断して行動する力を育んでいく教育
モンテッソーリ教育では、子どもを叱ってしつけることや、過度に褒めることは効果が低いと考えられています。
これは、「親に叱られたくない」や「褒められたい」という気持ちが、子どもの行動の理由になってしまうためです。
自分の行動に対する必要性や危険性を、子ども自身で判断できることをめざしましょう。
過度に叱ったり褒めたりするのではなく、大切なことはシンプルに伝えて、自分で判断する能力を養うことが大切です。
特徴4:子どもの自立を促す環境を準備する教育
自分が主体となって選ぶという環境が整えば、子どもは少しずつ自立を覚えていくでしょう。子ども自身が、主体となって選ぶという環境は自宅でも整えられます。
たとえば、「子ども自身に服を選ばせる」という方法がイメージしやすいでしょう。身近なところから自立を促す環境にしていくことは可能です。
幼児教育におけるモンテッソーリ教育の位置付け
モンテッソーリ教育は、幼児教育における重要な教育法の一つとして位置付けられています。特に、幼児教育は教員が知識や技能を一方的に伝授するスタイルが主流のものもあるなかで、モンテッソーリ教育は子ども自身が主体的に学ぶことを重視します。
そのため、モンテッソーリ教育を取入れた幼稚園や保育園などでは、教員は子ども自身の興味関心に集中できる環境を提供するために子どもの学習をサポートする役割を担います。教員の役割の違いは、幼児教育におけるモンテッソーリ教育の位置付けを考える上で、重要なポイントといえるでしょう。
モンテッソーリ教育の主な内容
モンテッソーリ教育は主に5つの分野にわけられます。
1度の活動で5つすべての分野を取入れるのではなく、発達段階や子どもの興味関心を考慮しながら、必要な活動をピックアップしていくのが特徴です。
ここからは、モンテッソーリ教育の具体的な内容を紹介します。
以下に挙げる項目について、日々の生活のなかでどのように学ぶのかを詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
- 文化教育
- 数教育
- 言語教育
- 感覚教育
- 日常生活の練習
文化教育
文化教育は、歴史、地理、地学、社会、宗教、動植など、言葉や数以外のものを対象とした分野です。小学校で学ぶ社会や理科に該当します。
世界で起きている環境問題やニュースなど、子どもが興味関心を持った幅広い分野を扱うのが特徴で、世界地図や国旗などを使いながら学びます。
また、美術や音楽など、五感で体験し感じられるものも文化教育です。
数教育
数教育は、計算ができることを目標にはしていません。数を理解し、その数が意味する量を体感することが目的です。数の意味を理解することで、十進法や四則演算などにつなげます。
実際の数教育で使う教具は、複数のビーズで、つくられた立方体や数字が書かれたカードなどです。数を数えるだけでなく、重さとして体験できるようなものが利用されます。
言語教育
言語教育では、単純に語彙を教えるわけではありません。発達段階に合わせて、徐々に語彙を増やし、行間や語彙に内包されている意味も含めて理解することが目標です。
使われる教具は、絵カードやひらがなカードなどです。ひらがなカードでは、「言葉並べ」などを行い、子どもの興味を促します。そのほかには、言葉を書くことも取入れられています。
感覚教育
感覚教育は、文化、数、言語教育の基礎を担う教育です。子どもは感覚刺激に敏感なため、小さな音や微妙な味の違いまで区別できます。
五感と呼ばれる「視覚」「聴覚」「嗅覚」「味覚」「触覚」を意識して使うことで、より感覚器官を洗練し、知性や情緒の発達を促すことが目的です。
教具を使った感覚教育には、長さだけが違う棒を使って、「長い」「短い」といった感覚を養うものがあります。ほかにも色が違う板や、大きさの違うブロックなどの教具が利用されます。
日常生活の練習
日常生活の練習の目的は、人格形成の基礎をサポートすることです。さまざまな環境変化への適応や自立を促すことで、自分の意志で体を動かす能力が身に付きます。
日常生活の練習では、子どもに正確なやり方を伝えます。モンテッソーリ教育には、「子どもはできないのではなく、やり方を知らない」という考えが基本にあるため、正確なやり方を知ることで、子どもの自立につながると考えられています。
教具として用いられるのは、私たちが日常生活で使うハサミやコップ、包丁などです。ほかにも、いすに座ったり線の上を歩いたりなど、基本的な動作を行います。
「モンテッソーリ教育」と「シュタイナー教育」の違い
「モンテッソーリ教育」とよく比較される「シュタイナー教育」は、感情や意志に働きかける教育です。
どちらの教育も幼少期に実施されることが多く、大人になるまで学ぶことができる教育です。また子どもの個性が尊重されるという面でもよく似ています。
2つの教育の大きな違いは、先生や大人との関わり方です。「モンテッソーリ教育」の場合は自主性が重んじられるため、先生や大人は見守るというスタンスをとります。
「シュタイナー教育」では、先生や大人との心のつながりが重要視されるため、子どもの活動の主導は先生や大人です。
2つの教育には、もう1点違いがあります。「モンテッソーリ教育」では、3歳から5歳で文字に興味を持つとされ、文字教育が行われます。
一方、「シュタイナー教育」では、7歳ごろまでは体の発達をメインにとらえるため、文字教育は行いません。
モンテッソーリ教育を行う4つのメリット
モンテッソーリ教育は、子どもの自立を促すための教育です。
そのほかにも、子どもの個性を伸ばせたり、子どもの社会性を身に付けたりできるところは、モンテッソーリ教育のメリットといえるでしょう。特に社会性は、モンテッソーリ教育ならではの「縦割りクラス」によって身に付く力です。
ここからは、子どもの個性や社会性以外に得られる4つのメリットを紹介するため、ぜひ参考にしてください。
- 情緒を安定させることができる
- 集中力を養うことができる
- 積極的に行動するようになる
- 自立した子どもになる
情緒を安定させることができる
モンテッソーリ教育は、子どもの興味関心を大切にし、やりたいことを尊重する教育です。子ども自身が好きなことに夢中になれるため、心の安定につながります。
また、モンテッソーリ教育は、子どもの個性を重要視します。他人と比較されないことも、情緒の安定につながるでしょう。
集中力を養うことができる
モンテッソーリ教育では、教具を使う活動時間を「お仕事」と呼び、おもちゃを使った遊びと区別します。「お仕事」では子どもの自主性を大切にするため、先生や大人は行き詰まっても手を貸しません。
そのため、子どもたちは「お仕事」に夢中になることができます。何度もこの教育を繰り返しながら、子どもは高い集中力を身に付けていきます。
積極的に行動するようになる
モンテッソーリ教育は、子どもの興味関心を尊重し、自己選択を大切にする教育です。自分がやりたいことが中心となる学習であるため、受け身教育ではありません。
常に自分からのアプローチが必要になるため、自然に自主性や積極性が身に付くでしょう。
ハサミや包丁、針など危険を伴う教具を使う場合でも、「危ないから」という理由で禁止することはありません。先生や大人が安全な使い方を伝え、サポートし取組みます。
子どもが主体となる学びを続けることで、積極的に行動できるようになるでしょう。
自立した子どもになる
モンテッソーリ教育では、子どもの自立を促す環境を整えることが重要視されています。教具を使った「お仕事」は、自分で選び作業します。行き詰まって作業が進まなくても、先生や大人を頼ることはほとんどありません。
「お仕事」をはじめるのも終わるのも、すべては自分の意志です。このような教育を続けることで自主性が養われ、自立した子どもになっていきます。
モンテッソーリ教育を実践するために必要なこと
子どもにモンテッソーリ教育を受けさせるには、いくつかの方法があります。しっかりモンテッソーリ教育を受けさせたい方は、専門の施設を選ぶとよいでしょう。
モンテッソーリ教育は、家庭でも簡単に実践できます。たとえば、服を選んだり、積み木をつんだりすることなどです。
ほかには、知育玩具を購入したり、アプリ教材を使用したりするのもいいでしょう。
アプリ教材でおすすめなのが、教育サービス「comotto」です。
「ワンダーボックス for docomo」では、五感を使って、手を動かして試行錯誤ができるアナログの良さと、デジタルの良さを掛け合わせた新感覚の学びをSTEAM領域のバラエティ豊かなテーマでお届けします。(※対象年齢4歳〜10歳)
詳細は、下記よりご覧ください。
出典:ワンダーボックス for docomo|comotto
年齢に合わせて適切な教具を選ぶ
モンテッソーリ教育では、子どもの年齢や発達段階に合わせて教具を選ぶことが大切になります。実年齢よりも早い対象年齢の教具を選ぶと、思わぬ事故につながる可能性があります。子どもが興味や関心を持った教具を選んであげましょう。
どのような教具を選んでいいか迷った場合は、子どもの年齢に合わせたサービスを利用するのもおすすめです。
「comotto」では、子どもの年齢や発達に合わせた、自然環境の学びの場を提供しています。家庭ではできない体験ができるでしょう。
「子どもの家」に通う
しっかりとモンテッソーリ教育を学ばせたい場合は、「子どもの家」に通うといいでしょう。「子どもの家」は、モンテッソーリ教育を受けるための施設です。2歳半から就学前の子どもが、保育園や幼稚園の代わりとして通えます。
2歳半から就学前の子どもが通える幼児部は、1学年10人の少人数制です。縦割りクラスもあり、違う年齢の子どもからの学びも充実しています。教具も豊富で、年齢や発達に合ったものを使えるのが特徴です。
「子どもの家」という名前がついていても、モンテッソーリ教育を行っていない施設もあります。「子どもの家」を探すときには、「日本モンテッソーリ教育綜合研究所などのホームページ」でご確認ください。
モンテッソーリ教育を行っている保育園に通う
モンテッソーリ教育を行う保育園は、一般的な保育園と大きく異なる部分があります。一般的な保育園では、年齢ごとにクラス分けされていますが、モンテッソーリ教育を行う保育園では異なる年齢での保育が一般的です。
また、保育時間のなかに「お仕事」の時間が組み込まれています。活動時間は園によって異なりますが、約1時間から3時間程度が一般的です。
なお、行政の保育園ページからモンテッソーリ教育対象の園を探すのは難しいため、「国際モンテッソーリ教会や日本モンテッソーリ協会のホームページ」など、専門団体の情報をご確認ください。
出典:保育所|厚生労働省
モンテッソーリ教育を行っている幼稚園に通う
モンテッソーリ教育を行う幼稚園の特徴は、保育園同様に縦割り保育であることや、「お仕事」の時間があることです。
一般的な幼稚園とモンテッソーリ教育を行う幼稚園の違いは、園行事にも見られます。
一般的な幼稚園では、運動会やお遊戯会など行事が豊富です。行事に対する練習をたくさん行い、完成度を求めます。
それに対し、モンテッソーリ教育を行う幼稚園は、園行事が少ないと言われています。これは、運動会や発表会などの練習に時間を使うよりも、日常の生活における学びを重要視しているためです。
園行事が少なくても気にならないという方は、モンテッソーリ教育を行う幼稚園を検討してもいいでしょう。
モンテッソーリ教育に携わっている幼稚園を探すときは、「モンテッソーリ協会関連ホームページ」から情報をご確認ください。
モンテッソーリ教育を受ける際に気をつけておくこと4つ
どのような教育法であっても、すべての子どもに適しているわけではありません。教育法を選ぶ際には、その教育法とお子さまの相性を見極めることが大切です。
そもそもモンテッソーリ教育にデメリットはあるのか?
子どもの持つ自己教育力を発揮し自立へと促すモンテッソーリ教育は、よい面ばかりではありません。モンテッソーリ教育のデメリットになる部分や、気をつけるポイントを押さえる必要があるでしょう。
たとえば、モンテッソーリ教育は自由にやりたいことを選択できるがゆえに、他人と協力したり合わせたりするという部分が難しくなる場合があります。
ほかにも、幼稚園や保育園の方針、先生の指導力の格差などが子どもの成長に大きく影響すると考えられています。
上記を踏まえ、すべてをモンテッソーリ教育にするのではなく、必要に応じて教育を取入れるといいでしょう。
自由と放任の違いに気をつける
モンテッソーリ教育では、子どもが自由にやりたいことを選択しますが、それは「放任する」ということではありません。
たとえば、刃物を使った「お仕事」をすることもあるでしょう。そのときは、刃物の安全な使い方や危険性を伝えます。子どもが危険性を理解し、安全に作業できることが前提です。
すべてを自由にするのではなく、一定の制限のなかで自由に選択させる教育法になります。
活発な子どもにとってはストレスになりやすい
モンテッソーリ教育は教具などを使う活動が多く、保育園や幼稚園では約1時間から3時間程度の屋内活動の時間が設けられています。
そのため、外で活発に遊びたい子どもにとっては、ストレスとなることもあるでしょう。外での活動が足りないという場合は、スポーツ教室やダンススクールなどに通い体を動かすことがおすすめです。
集団のなかで子どもが浮いてしまう可能性がある
モンテッソーリ教育は基本的に1人で活動するため、個性を伸ばすことや物事に集中するという意味ではおすすめです。
その反面、集団での行動は行われないため、周りに合わせることや集団行動に苦手意識を持ってしまう場合があります。
そのようなことを防ぐためには、子どもの柔軟性と順応力を活かし、モンテッソーリ教育以外の場で集団活動するのがおすすめです。
最初は戸惑うこともあるでしょうが、時間が経つと集団に溶け込めるようになるでしょう。
保育園や幼稚園を選ぶときは見学に行く
モンテッソーリ教育を受けられる保育園や幼稚園は、どこでも同じ内容の教育が受けられるわけではありません。保育園や幼稚園によって、モンテッソーリ教育を行う時間や、有資格者の在籍人数などが違います。
どのくらいモンテッソーリ教育に力を入れているかや、教育の内容などは直接見学に行って確かめましょう。
見学で園の方針や子どもたちの様子を見ると、園での生活をイメージしやすくなります。
モンテッソーリ教育以外の教育の種類や教育方法
ここまでモンテッソーリ教育を中心にみてきましたが、モンテッソーリ教育以外の下記の幼児教育の手法を3つご紹介します。
・シュタイナー教育
・レッジョ・エミリア教育
・ピラミッドメソッド
シュタイナー教育は、芸術活動や自然体験を積極的に取入れ、豊かな感性や創造性を育む教育法です。
レッジョ・エミリア教育は、子どもを「探求者」と捉えて、主体的な学びを促す教育法です。イタリアのレッジョ・エミリア市で生まれた教育法で、1年単位で子どもたちがプロジェクト活動を行うことを取入れています。
ピラミッドメソッドは、オランダ発祥の幼児教育法です。ピラミッドメソッドは、「子どもの自主性」「保育者の自主性」「寄り添う姿勢」「距離をとる姿勢」の、4つの基本的な理論があり、子どもに任せて距離を取ることなどが大切にされています。
モンテッソーリ教育とはどんな教育法なのか知っておこう
モンテッソーリ教育は、子どもの持つ自己教育力を前提に、子どもの自立を促す教育です。将来社会人となったとき、自分で正しく判断し選択できる力は、誰もが必要とするものでしょう。
モンテッソーリ教育では、子どもの自立以外にも、たくさんの力が養えます。また、モンテッソーリ教育で身につけられる社会性や集中力などは、子どもが大きくなったときに大いに役立つでしょう。
本記事で紹介したモンテッソーリ教育の教育法を参考に、子どもの自主性を尊重した学びの場を作ってみてはいかがでしょうか。